青木俊三は定年退職と同時に娘翔子の結婚式を迎えた。
翔子は妻順子との間に遅くに生まれた一人娘で、やれやれと式を終えた帰り道、突然順子が
離婚を申し出たのだった。
既に粗方荷物の整理も終えていた順子は、自宅に戻るとすぐに出て行った。
原因は俊三の過去八年間の浮気だった。
知らないと思っていた俊三にとっては青天の霹靂!
よく十八年、何も言わずに堪えていたと驚く。
翌日から六十五歳の男の一人暮らしが始まった。
二か月経過したある朝、新聞記事に目がとまった。
十年前に別れた浮気相手凛子の亭主と同じ名前が、交通事故の死亡者として載っている。
同姓の他人の可能性もあるが、独特な名字だ。気にかかる…。