鏡花文学の信仰と図像
物語ることへの意志
著:富永 真樹
内容紹介
鏡花迷宮の設計図!
幻想は切実さによって信仰と結ばれ、信仰と幻想は図像に宿った。
現実逃避ではなく現実を直視するリアリズムから、鏡花幻想が誕生する。そのパラドクスの指摘にとどまらず、「近代以前の物語」と「近代小説」の関係性までをも展望する8篇の論考。
厳しい現実を前にして人々が求めた信仰と、図像との関わりを探り、鏡花が到達したものを明らかにする。
目次
凡例
序
第一部 同時代宗教へのまなざし
第一章 「思想惑乱の時代」における〈現実〉へのまなざし—「瓔珞品」—
一、同時代宗教問題
二、救いのかたち
三、「宗教」と信仰
四、〈現実〉への応答
第二章 〈聖〉と〈魔〉のダイナミズム—「風流線」「続風流線」—
一、偽〈聖〉という〈悪〉
二、〈魔〉、「外道」と同時代状況
三、〈聖〉から〈魔〉へ
四、〈魔〉から〈聖〉へ
五、「夜」から描かれる絵物語
第二部 図像と信仰
第一章 偶像に宿る信仰—「春昼」「春昼後刻」—
一、多義性のもつ意味
二、同時代宗教意識との関わり
三、偶像と信仰
四、〈非・現実〉という想像力
第二章 非在を描く試み—「夫人利生記」—
一、樹島の欲望
二、『釈迦八相倭文庫』への回路
三、図像の反復、共有
四、非在の先にあるもの
五、祈りと応答
第三章 〈物語〉が問うもの—「山海評判記」—
一、〈オシラ神〉のモチーフ
二、〈産〉のモチーフ
三、二つの〈物語〉
四、雪岱挿絵という〈物語〉
五、〈物語〉からの問いと応答
第三部 〈物語〉と図像
第一章 書物という世界—『日本橋』—
一、雪岱による『日本橋』装幀
二、重なる女たち
三、雪岱が描く「魂」—『日本橋』見返し
四、雪岱が描く「魂」—『日本橋』函・表紙
五、書物としての意味
第二章 〈物語〉を体現することの試み—「国貞ゑがく」—
一、消えゆく世界へのまなざし
二、「国貞ゑがく」錦絵
三、失われつつあるものを結ぶ世界
四、「国貞ゑがく」が体現するもの
第三章 「小説家」の終わりからはじまりへ—「薄紅梅」—
一、回想記としての「薄紅梅」
二、糸七—語り手—鏡花
三、引き込まれる〈物語〉
四、「薄紅梅」に書かれる「小説」のかたち
五、小説家・泉鏡花
主要参考文献一覧
図像出典一覧
あとがき
要語索引