国籍と遺書、兄への手紙
ルーツを巡る旅の先に
著:安田菜津紀
内容紹介
フォトジャーナリスト安田菜津紀がつづる、自身のルーツをめぐる物語。
父は在日コリアン2世だった。
父の死後に知ったその事実に、著者のアイデンティティは大きく揺れ動く。
自分はいったい何人なのだろう。父はなぜ語らなかったのだろう――。
朝鮮半島からやってきた祖父母も、その子どもである父も、歳の離れた兄も、もうこの世にはいない。手がかりがほとんどないなかで、祈るような気持ちで資料を取り寄せ、わずかな痕跡をたどってかれらがかつて住んでいた地を歩き、交流のあった人の話に耳を傾ける。
その旅でしだいに見えてきた家族の在りし日の姿を胸に抱きながら、目の前の現実を取材する日々。現在と過去を往還するなかで、ときに気分が沈みそうになっても、多くの人との出会いにより、著者は自らの向かうべき道を見出していく……。
貧困、災害、難民、ヘイトクライムなどの取材を通して、人々の声を伝え続けてきた著者が、自らのルーツに向き合い、大きな気づきを得て、あらためて社会のありかたを問いかける渾身の作。
【メディア掲載・出演情報】
5月7日 朝日新聞デジタルに、インタビュー掲載
5月16日、TBSラジオ「Session」出演
5月17日、毎日新聞デジタル、毎日新聞夕刊に、著者インタビュー掲載
6月5日、東京新聞朝刊特報面に紹介記事
6月10日、毎日新聞朝刊「今週の本棚」に書評掲載。評者は作家の中島京子さん
6月13日、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」に出演
6月15日、「週刊新潮」書評掲載(6/22日号)、評者は篠原知存さん
6月24日~25日、沖縄タイムス、琉球新報、秋田さきがけ、 福島民報、沖縄タイムス、山陰中央新報 下野新聞に書評掲載(共同通信配信)。評者は武田砂鉄さん
6月25日、「しんぶん赤旗」書評掲載。評者は渡辺雅之さん
6月26日、ハートネットTV「ルーツをめぐる旅の先に SNS上のヘイトを問う」
6月26日、AERA「この人のこの本」コーナーに掲載
目次
プロローグ
第1章 旅のはじまり
「曖昧な喪失」と、カンボジアでの出会い/戸籍で目にした思いがけない文字/「また来るために」の響き/兄への手紙/母国語を話せないなんて「かわいそう」
第2章 「家族とは何か」から「故郷とは何か」へ
瓦礫に覆われた街と「故郷」/シリアは死んでしまった、それでも――/お前は分断を認めるのか
第3章 ルーツをたどって
もう一つの「遺書」、外国人登録原票/ウトロに刻まれた「生きた証」/学校襲撃事件の深い爪痕/「朝鮮人って悪いの?」/はぐらかされた「歴史否定」/追悼と喧騒/「後ろめたさ」の正体/「自分語り」の場/社会保障制度の「外側」で生きた人々/「なんで引き下がらなきゃならないんだ」
第4章 残された手がかりをつなぎ合わせて
神戸、土地の記憶と祖母の足跡/除籍謄本と「死者への手紙」/「たっちゃん」/同級生の輪の中で/兄への手紙、そのまた続き/祖父は拳に何をかけたのか/祖父母の見てきた「原風景」を探して
第5章 ヘイトは止まらない濁流のように
「それ以外の日本人とは別」/初めての法廷に立って/続いた「奇跡」/選挙の名を借りたヘイト/「司法から否定された人々」と判決
第6章 祖父母の「故郷」、韓国へ
名を剥ぎ取られた女性たち/命の源流/「女の顔をしていない」歴史/兄への手紙、またいつか
エピローグ
感謝を込めて
参考文献