出版書誌データベース

大物忌神は律令政府によって出羽国最高峰の鳥海山に祀られた神である。この奇怪な神名こそが鳥海山を祀るに相応しいものだった。かくして古来北方の霊山とされてきた鳥海山で神仏は如何ように展開したのか、本書は史料を博捜し、所々に新説異説を繰り出す、注目の書である。

開　章
第一章　大物忌神の創祀 －地主神から撫夷鎮海の神へ－
第二章　神宮寺の創建 －安慧の出羽国講師派遣が契機－
第三章　鳥海山信仰の成立 －大物忌神の展開－
第四章　神仏習合の進展 －本地仏と薬師・観音信仰－
第五章　山上社堂の造営 －勧化、造営と遷宮－
第六章　出羽三山との関係 －三山の比定と鳥海山－
第七章　縁起年代再考 －二乗作『鳥海山大権現縁起』の成立年代－
結　章

特定研究
研究一　旧神宮寺本尊二像の年銘表記
研究二　大著『鳥海山修験』の刊行に寄せて
研究三　初期鳥海山史研究に引用された史料
研究四　天保十一年由緒御改
研究五　国史上の大物忌神
研究六　新庄藩舛形村七所明神宛て寄進状

後記

付属資料
付一　国史上の大物忌神（要略）
付二　関係年表
付三　関係地図
付四　参考文献
付五　著本初出論文、発表講演

著：神宮 滋
昭和16年（1941）秋田県大仙市神宮寺（当時、仙北郡神宮寺町）生
神宮寺神宮家当代（神道宮司位、仏門大律師位兼帯）
慶応大学卒業。皇學館大学専攻科修了
東京都千代田区現住
北国の歴史民俗考古研究「北方風土社」同人
（近年主要著作）
『秋田領民漂流物語』　 無明舎出版、2006年
『戊辰戦争出羽戦線記』　無明舎出版、2008年
『鳥海山縁起の世界』　無明舎出版、2011年
『仁和寺尊寿院阿證』　イズミヤ出版、2017年
『名族佐竹氏の神祇と信仰』　無明舎出版、2019年
「皇居お濠の積石に「無阿尓」の刻字」『北方風土』73、2017年1月
「旧石器ねつ造事件と秋田考古」『北方風土』77、2019年1月
「大仙市神宮寺八幡神社棟札考」『出羽路』159、2019年3月
「出羽三山信仰と鳥海山」『山形県地域史研究』45、2020年2月
「秋田県初の旧石器遺跡発見の功労者は誰か」『北方風土』79、2020年10月
　他、当地域の神仏、鳥海山信仰、秋田考古、戊辰戦争など論考多数