■推薦■
専門知と民衆知の接点、中国医学から西洋医学への移行。江戸時代の育児書がこんなに面白いことに驚かされる。
同時に、知の在りかを探る哲学者のまなざしによって、私たちの「身体」「精神」「自然」の観念が揺さぶられる。
−−野矢茂樹(哲学者)
現在、当たり前になっている条件がまだなかった時代、子どもを身ごもり、産み、育てるということは、どのように行われていたのか、
当時の人たちはどんなふうに感じ、何を考えていたのか。子どもはどのように扱われ、どんな病気にかかったのか。親たちはなにを喜び、恐れたのか。
自分が今生きる社会と歴史を理解するには、自らの現在と過去に問いかける必要がある。
だから本書では、江戸時代までさかのぼって、日本における育児の歴史、その背後にある思想を探っていく。
そのさい、とくに近代以前と以後の変化に注意を向けるとしよう。なぜなら、よく言われるように、近代化こそが現在の私たちの生活と思考の土台を作ったからである。この点は、育児についても当てはまる。それ以前はまったく異なる世界が広がっており、それと比較することで、今日の私たちの生が依って立つ根拠を明らかにすることができるだろう。
(「序」より)