中村桂子コレクション・いのち愛づる生命誌 第1巻 (全8巻)
ひらく 1
生命科学から生命誌へ
著:中村 桂子
解説:鷲谷 いづみ
内容紹介
21世紀の新しい知「生命誌」
生命を“分子の機械”と捉える生命科学への疑問から創出した新しい知「生命誌」。
「生命誌」は、ゲノムを基本に、人間も含むあらゆる生物の“歴史”と“関係”を読み解く。
ヒトクローン、遺伝子組換えなどの現代生物学の問題に、科学と日常の眼で答える。
「科学」は今、科学技術に吸収され、経済効果だけが求められるようになってきています。とくに生命科学でそれが目立ちます。しばらく前までは生物学は役に立つ学問とはされていませんでした。けれどもDNA研究が進み、そこから技術が生まれると、新しい芽生えであるだけに期待も大きく、時代の流れに乗って科学技術として評価される研究――主として医学に近い研究が主流になりました。
科学技術となると、特許を求めての競争、経済効果での評価が優先します。生きているってどういうことだろうと問うたり、生きものを見ているとおもしろいと感じたりする喜びからは遠くなっていきました。
科学技術に吸収されない新しい知として考えだしたのが「生命誌」です。五〇代も半ば近くになって、やっと自分で考え、自分でつくりだしたものを世に問うことができました。(本文より)
目次
はじめに
Ⅰ 生命科学から生命誌へ
1 ゲノムとは何か――生命の謎に挑む
2 「生きている」とはどういうことか――生命科学から生命誌へ
3 科学の呪縛を解く
4 生命誌から持続可能性を考える
5 生命科学による機械論から生命論へ
6 遺伝子工学とバイオテクノロジー
7 ヒトゲノム解析の意味――遺伝子が示す「差別」の錯誤
8 「ヒトクローン」――生命科学の本質を見誤ってはいけない
9 軽んじられた「生命」考
Ⅱ 生命誌の扉をひらく
はじめに
第一章 生命科学から生命誌へ
第二章 人間と自然の関係
第三章 文化としての科学
第四章 生命の物語
第五章 ヒトゲノム・プロジェクト
第六章 時間を解きほぐす
第七章 アフリカの朝もや
第八章 生命誌研究館
おわりに――おもしろいことが次々とわいてくる
参考文献
初版第二刷のための「あとがき」
初出一覧
あとがき(中村桂子)
[解説]生きものの知恵に学ぶ(鷲谷いづみ)