絵伝と縁起の近世僧坊文芸
聖なる俗伝
著:堤 邦彦
紙版
内容紹介
日常的な仏事や寺参りの風習が日本の全階層に行き渡ったのは、18世紀に入ってからだった。これによって寺社は、自院をアピールする縁起譚や宗祖を顕彰する高僧伝を、大衆の興味を引くものに変化させていく。絵画化され、また伝奇性や娯楽性がふんだんに盛り込まれたそれらの文芸を「聖なる俗伝」と位置づけ、江戸中・後期の文芸と宗教の関係を解き明かす。
目次
はじめに
[Ⅰ 近世高僧伝の文芸性と口承性]
第一章 近世高僧伝の虚と実──道元伝記の変容を中心に
第二章 親鸞の産女済度譚──縁起と口碑伝説のあいだ
第三章 蓮如上人・幽霊済度の島──真宗史と在地伝承
[Ⅱ 絵解きと高僧絵伝]
第一章 勧化本と絵解き──幡随意上人伝の図像化をめぐって
第二章 二十四輩巡拝と関東絵伝
第三章 『西光寺御絵伝』と「鬼人成仏証拠之角縁起」
第四章 二十四輩寺院縁起の周辺──水辺の風土と念仏の勝利
第五章 親鸞伝から『性信上人絵伝』へ──報恩寺絵伝をよみとく
第六章 関東絵伝の近代──讃岐に渡った二十四輩伝承
[Ⅲ 縁起と近世文学]
第一章 いくさ語りから怪談へ
第二章 浄瑠璃姫伝承と寺宝開帳
第三章 冥府は現世にあり──地獄観の近世的変容
第四章 福神と貧乏神──近世文学は「宿世の貧報」をどうとらえたか
第五章 上田秋成と唱導文化
[Ⅳ 資料篇]
資料①『弾誓上人絵詞伝』
資料②『幡随意上人諸国行化伝』
あとがき
初出一覧
索引