出版社を探す

オランダ社会への統合と「クルド人問題」

クルド組織と第2世代の活動を中心に

著:寺本 めぐ美

紙版

内容紹介

オランダに居住し、トルコに背景を持つクルド系住民が、トルコでのクルド人の独立や連邦制を要求する政治活動をどのように展開してきたのか。またその背景を国際関係学的な視点から実証的に明らかにする。

――オランダに居住するクルド系住民の活動は、受け入れ国オランダにおける統合政策に積極的に対応しつつ、同時に、送り出し国トルコからの独立や連邦制を要求するクルドの政治運動と結びつくという両面性を持つ。受け入れ国に統合される移民・難民が、送り出し国との結びつきを弱めるという単純な現実があるわけではない。また「統合の意志のない」移民・難民が送り出し国との結びつきを強めるというのでもない。本書の事例検討から、受け入れ国の社会に統合されるだけでもなく、受け入れ国に背を向けて送り出し国との結びつきを強めるだけでもない、移民・難民の、より重層的な統合のあり方が見えてくるだろう。(「まえがき」より)—-

目次

序章 オランダ在住クルド系住民による国境を越えた政治活動――受け入れ国の統合政策と、送り出し国の歴史・政治的展開の中で/先行研究の検討/本書の方法と構成
第1章 「クルド人問題」の展開――トルコにおける差別・抑圧の歴史的経緯/西ヨーロッパに拡散する「クルド人問題」/ほか
第2章 オランダにおける1980年代以降の移民政策の展開――1980年代の移民政策における多文化主義/1990年代以降の移民政策の変容/地方自治体で継続する多文化主義に基づく公的支援/ほか
第3章 オランダ社会への統合をめぐって――クルド組織の活動 FED-KOMの活動/KOMKARの活動/ほか
第4章 統合と「クルド・ナショナリズム」への共感――クルド系住民第2世代の活動 統合政策とクルド系住民第2世代/「クルド・ナショナリズム」とクルド系住民第2世代/ほか
第5章 クルド政党から距離を置く組織・第2世代の活動 クルド組織間の連携/イスラーム組織に参加するクルド系住民第2世代の活動/ヨーロッパ諸国の政治的・歴史的責任を問う/ほか
終章 西ヨーロッパにおける「クルド人問題」の展開 オランダ社会への統合と「クルド・ナショナリズム」/オランダ社会に根ざした「クルド人問題」という視点/今後の研究課題

著者略歴

著:寺本 めぐ美
津田塾大学国際関係研究所特任研究員。2017年津田塾大学大学院国際関係学研究科修了。博士(国際関係学)。
主要な著作に「移民統合政策の厳格化とオランダ・ハーグ市の政策における多文化主義」宮島喬・佐藤成基編『包摂・共生の政治か、排除の政治か――移民・難民・マイノリティと向き合うヨーロッパ』(明石書店、2019年)、「オランダのクルド系移民――社会統合とクルド・ナショナリズム」山口昭彦編『クルド人を知るための55章』(明石書店、2019年)、「地方自治体における多文化主義の意義と限界――オランダ・ハーグ市の政策とクルド組織の活動から」(『移民政策研究』11、2019年)、「オランダにおける『クルド・ナショナリズム』の展開――クルド系住民第2 世代の政治意識の分析から」(『日本中東学会年報』35(2)、2019年)など。

ISBN:9784842065953
出版社:有信堂高文社
判型:A5
ページ数:256ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2020年11月
発売日:2020年11月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KC