本書は、ドイツ資本主義のあり方にも関連する戦後的特質を企業経営のレベルにおいて規定しているシステム、あり方が1950・60年代に形成されてきたという理解に立って、その形成過程と意義を、戦前との比較視点のもとに、また1970年代以降の歴史的過程との関連の中で明らかにすることを意図している。
本書では、以下の点にとくに留意して考察を行っている。
第1に、企業経営に影響を及ぼす諸要因の相互の関連性・規定性をふまえた考察という視点である。すなわち、アメリカの世界戦略と対ドイツ政策、その一環としての生産性向上運動の展開による資本主義の世界的連鎖の広がり・深まりという戦後的条件をふまえて、また戦後ドイツにおける企業と国家の関係、労使関係、企業間関係、金融システム、生産力構造、市場構造、産業構造、企業と市場との関係(市場化のあり方)などの諸要因の相互の関連性・規定性をふまえて、それらの全体的な関係性のなかで企業経営の変化を考察・把握するという点である。
第2に、そのような分析の枠組み・視角から戦後の企業経営の変化をアメリカの技術や経営方式の導入との関連のなかで考察・把握するという点である。すなわち、アメリカ的な方式の導入のなかで、それらがドイツの条件にあわせて修正されながらどのようなドイツ的な経営のスタイル、様式、特徴・あり方がみられることになったか、またそのことはいかなる意義を持ったかという点の解明を試みている。本書では、技術の問題と共に、この時期に導入が取り組まれた主要な経営方式を全面的に取り上げて考察し、その実態の総合的・全体的な把握をとおして企業経営の変化の全体像を明らかにしている。そのさい、産業別比較、企業間の比較の視点から変化の一般的傾向とともに、産業間、企業間の差異、そこにみられる諸特徴をも明らかにしている。
第3に、そのような企業経営のドイツ的な特徴、あり方をめぐって、戦後当初から有力な輸出市場となりうる先進諸国がアジアには存在せずアメリカへの大きな輸出依存とならざるをえなかった日本とは異なり、先進諸国が多く存在していたヨーロッパの市場の条件・特質がいかなる意義を持つものであったかという点、「ヨーロッパのなかのドイツ」ということの意義をふまえた考察を行うという視点である。すなわち、共同市場化の問題も含めて戦後のドイツ資本主義と企業経営の特質・条件がヨーロッパ的構造・条件のもとに形成されてきたという視点から、ヨーロッパという地域性に根差したドイツ資本主義の構造的条件との関連のなかで企業経営の考察を行っている。
第4に、そのような企業経営の面からのみならず、産業集中の面からも戦後のドイツ資本主義をとらえるという視点である。そこでは「産業と銀行の関係」、コンツェルン体制にみられる企業間関係に基づく産業集中の変化の内実を解明し、それを蓄積構造の面から把握するなかでドイツ資本主義の協調的特質の戦後的なあり方について考察するとともに、企業経営との関連のなかで産業集中の意義を明らかにしている。