まえがき
〔戦前編〕
「一寸法師」のスキャンダル:江戸川乱歩と新聞小説………成田大典
1 新聞小説としての「一寸法師」
2 娯楽としての犯罪
3 美醜という見世物
4 差別する眼差し
5 現実と虚構の曖昧化
6 スキャンダラスな死
指紋と血の交錯:小酒井不木「赦罪」をめぐって………井上貴翔
1 はじめに
2 認知されていく〈指紋法〉
3 指紋言説の二つの編成
4 “血”の連続と断絶
5 “徴”の過剰
6 おわりに
〔戦後編1〕
坂口安吾ミステリの射程:『荒地』派詩人たちとの交錯………押野武志
1 はじめに
2 近・現代詩殺人事件
3 『荒地』派と戦後ミステリ
4 探偵小説論とファルス論との接点
5 叙述トリックとしてのファルス
6 おわりに
「終戦直後の婦人」の創出:松本清張『ゼロの焦点』………高橋啓太
1 はじめに
2 『ゼロの焦点』における「過去」と「現在」
3 「終戦直後の婦人」とは何か
4 「終戦直後の婦人」としての佐知子
5 『ゼロの焦点』と占領期表象の問題
帰郷不能者たちの悲歌:水上勉『飢餓海峡』論………近藤周吾
1 はじめに
2 〈社会派推理〉から〈人間〉へ
3 北海道と若狭をつなぐ
4 笠井潔への反論
5 故郷というテーマ
6 おわりに
〔戦後編2〕
もうひとつのクローズドサークル:『八つ墓村』と『屍鬼』………横濱雄二・諸岡卓真
1 開かれた閉鎖空間
2 物語と反復
3 遡行と緊迫
4 閉鎖の反復
5 閉塞の緊迫
6 なぞりかえすこと
〈わたしのハコはどこでしょう?〉:赤川次郎「徒歩十五分」をめぐって………小松太一郎
1 はじめに
2 新参団地居住者の「視線」
3 戦略としての「迷子」
4 意外なる「真犯人」
〔現代編〕
憑物落し、あるいは二つの物語世界の相克:京極夏彦『姑獲鳥の夏』………横濱雄二
1 はじめに:姑獲鳥の位置
2 二つの世界の構造化
3 二つの物語世界の位置づけ
4 可能世界と経験世界の二重性
5 物語世界の結びつき
サスペンスの構造と『クラインの壺』『ジェノサイド』の比較考察………大森滋樹
1 サスペンスの原理的分析
2 探偵小説とサスペンス時空間
3 高度経済成長と時空間コントロール
4 岡嶋二人『クラインの壺』のバーチャル時空間
5 高野和明『ジェノサイド』のバーチャル時空間
創造する推理:城平京『虚構推理』論………諸岡卓真
1 はじめに:謎解きの時代
2 超自然的な力の導入
3 後期クイーン的問題
4 謎の不在
5 想像力の怪物
6 創造する推理
7 当事者の物語
8 安全弁としての超能力
9 おわりに:上書きされる世界で
3・11以降のミステリ的想像力:「あとがき」に代えて
初出一覧
執筆者紹介
索引