幕末明治の儒学者・阪谷素(しろし)が提唱した「多様な諸学の差異を尊ぶ=尊異」の思想は、遡って江戸後期の儒学界にも広く見出すことができる。17世紀の山崎闇斎学派と伊藤仁斎、18世紀の荻生徂徠・井上金峨・高志泉冥・尾藤二洲ら儒学者たちの思想を紐解くとともに、朱子学における「異学を排除し唯一の真理を窮める=窮理」思想との対比を試みる。「他者の尊重」「多様性」をキーワードに江戸思想の諸相を探った、他に類を見ない研究。
●目次
序 章
牽 牛 花
差異意識
自由な思想市場
課題・対象・視点
第一章 近世における「尊異」の思想 ─ 山崎闇斎・伊藤仁斎・荻生徂徠をめぐる考察 ─
はじめに
一、「崎門の絶交」
二、伊藤仁斎の「全交」
三、『論語徴』における荻生徂徠の師弟・朋友観
小 括
第二章 「雷同」を超えて「自得」へ ─井上金峨を中心に
はじめに
一、同/異
二、師と先儒
三、「訓詁」と「自得」
四、二つの礼
小 括
第三章 「異学」排斥を支えた歴史認識 ─高志泉溟から寛政正学派へ
はじめに
一、高志泉溟とその著作
二、高志泉溟の中国認識
三、寛政正学派の中国認識
四、儒学の経世学化と明清交代
小 括
第四章 「異学」と窮理 ─尾藤二洲を中心に
はじめに
一、「異学」について
二、窮理
小 括
第五章 「理」のゆくえ ─古賀侗庵と阪谷素
一、窮理の歴史 ─ 古賀侗庵
二、「窮気」と「公理」 ─阪谷素
小 括
終 章
一ツモ同容ナル者無ク、同質ナル者ナシ
「悪異好同」「諂諛」
結 び
文献一覧
あとがき
索 引