「満蒙開拓民」の悲劇を超えて
編著:大類善啓
内容紹介
「開拓」という名によって〈新天地・満洲〉へ渡った人々は敗戦によって酷寒の地に取り越され、飢えと寒さ、疫病によって死屍累々となり、その遺骨は山野に散乱し長い間風雪にさらされることとなった。
苦難を越えて生き延びた人々が中国の人々と手を取り合って遺骨を収集し、「日本人公墓」を建立するまでの貴重な現代史の証言集。
目次
■はじめに 満蒙開拓団の悲劇を超えて~中国ハルビン市方正県日本人公墓建立の物語~(大類善啓)
なぜ方正に日本人公墓があるのか?/〝満洲事変〟そして〝満洲国〟へ/ソ連参戦、そして日本の敗戦/新中国、そして「大躍進政策」の失敗/「自分たちで食糧を作ろう」/生きていた国際主義 /歴史を振り返る意味とは
■日本の近代とは…“夜明け”から暗黒へ(大類善啓)
ペリー来航 江戸幕府の終焉/広がる攘夷運動/清国との戦いに突入した日本/日露戦争へと向かう両国/内紛を抱えていたロシアの実情は…/満洲は日本の生命線だ!
■[特別寄稿]日本人公墓についての随想(王鳳山)
花の咲かない桜4/鶴の歌、蝶の舞 /心の傷を涙で洗/生者なおかりそめの…
■天を恨み 地を呪いました――中国方正の日本人公墓を守った人たち(奥村正雄)
四世団欒/極楽浄土の門/渡れない橋/荒地探しで見たもの/砲台山が背負った背理/方正まで辿りつけば…/黒い異物、子どもの遺体/方正の煙突は見えたが/子を遺棄し、絞殺し/誤った命令とデマで/「無限の忍苦始マリタルナリ」/辿り着いた開拓団・内訳/月光の下で娘は…/出産翌日の逃避行/凍土の穴に死体を積み重ねる/「白いおかゆをひと口…」/娘を葬れない母親/「私を殺してから帰れ!」/死体が溶け始める/「墓碑は人民政府の手で」/中国側生き証人に会う/陽があたる斜面に/碑銘揮毫代は、酒2ダース/二日がかり川舟で運ぶ/文革の嵐の中で/初めての墓参団/新しく加えられた遺骨/謎に包まれた麻山事件/合掌する妻を射殺/「ノンノン様の所へ行こう」/遺骨収集の障害/「死者の霊が迷わぬよう」/小高い丘にイチイの樹/海倫県の遺骨も/風雪に耐えて花開く/厳冬にたたずむ娘/あとがき
■あの歴史に立ち会う――「方正地区日本人公墓」建立前後の回想(趙喜晨・北京)
前例のない歴史的な仕事/石材選びと安置場/墓碑の形/碑文の揮毫/石材を選ぶ/碑文の書と彫刻
■報恩の「中国養父母公墓」――自力で建立した遠藤勇の物語 (大副敬二郎)
依蘭県松木河岩手開拓団/逃避行の始まり/逃げる途中で敗戦を知る/遠藤勇一家の壊滅/身元がわかると引っ越した/文革の嵐に巻き込まれる/帰国許可と新たな苦悩/養父母への恩義を忘れずに/養父母への絶えない思慕/養父母公墓建立の思い
■金丸千尋――中国・東北との友好に駆けた男(大類善啓)
中国大陸との出会い/人民解放軍へ入る/キヌ子夫人と方正県/藤原長作さんとの出会い/麻山事件の遺族との邂逅/孫志堅との出会い
■ある満蒙開拓団員の戦後(宮沢一三・長野県)
ソ連参戦で子捨て暴行の逃避/暖土のうちに墓穴を掘って/武運長久の願いとさようなら/信用されて合作社の役付きに/仕事さがしと人に助けられて/中国の教育受けた子供たち/特殊学級の誕生に努力を/残留邦人の苦労を思えば/言葉、食べ物、習慣の違い/拾った招き猫の貢献/日本人公墓管理費を招き猫が/記念碑に刻まれた宮沢一三
■水稲王 藤原長作物語――中国の大地に根づいた日中友好の絆(大類善啓)
はじめに/一九一二年、岩手県沢内村/初めての仕事 仙台/ブラジルへの夢 結婚/日中戦争から太平洋戦争へ/敗戦 新しい出発/米作り日本一/悩める長作/中国への目覚め/念願の初訪中/方正県への旅立ち/『自分にやらせてみなさい』/方正県で稲作指導始まる/日中友好水稲王/拡大する藤原式稲作法/永遠の休息に/藤原長作氏 略歴/表彰歴
■「方正県」との出会いとその関わり――ある一つの方正支援活動報告(大類善啓)
設立の発端――ある篤志家の願い/残留婦人たちへの支援構想/岡崎嘉平太氏の秘話 周恩来の言葉/方正県・王鳳山副県長らの来日/大塚夫人の養子縁組と逝去/会再興の声広がる/方正県・陳福堂さんの日本留学/王鳳山氏の再来日/初の方正県訪中団
あとがき
ISBN:9784826507462
。出版社:批評社
。判型:4-6
。ページ数:248ページ
。定価:2200円(本体)
。発行年月日:2024年06月
。発売日:2024年06月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KC。