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対立を歓迎するリーダーシップ

著:アーノルド・ミンデル
訳:松村 憲
訳:西田 徹

紙版

内容紹介

■アーノルド・ミンデルによるビジネス領域の初翻訳
プロセス指向心理学の創始者として世界的に知られ、日本においてもファンの多い著者アーノルド・ミンデルによるビジネス領域・リーダーシップ領域の著作の初翻訳。
ワールドワークというファシリテーション手法についての理論と実践方法に加えて、特に、「ファシリテーター」に求められる「リーダーシップ」について詳述されている。

■本書の内容(前書きより抜粋)

ある会社でダイバーシティー&インクルージョン(D&I)をテーマとした検討会が実
施されました(事実をもとに脚色しています)。

D&I担当役員「女性や外国人といった多様な人材の可能性をもっと引き出してください」
マネジャーA氏「理想はわかりますが、そんなことをすると職場が混乱して業績が下がりますよ!」
D&I担当役員「このデータを見てください。D&Iを推進している会社や、女性を役員・管理職に登用している会社は、業績が良いのです。多様性はイノベーションを生み、業績に貢献するのです。これが事実です。あなたの意見は単なる思い込みにすぎません」

巻き起こった対立とそのことへの対処を簡略化してセリフにしてみました。さて、この会社のD&I施策は実践されたでしょうか。皆さんのご想像のとおりです。この検討会から5年たった今でも、この会社では日本人男性が主流派を占め、女性や外国人の活躍は絵に描いた餅のままです。
組織の未来を真剣に考えるリーダーたちは、ビジョンを描き、その方向性が正しいことをデータとロジックで訴えてきました。しかし、それだけでは抵抗勢力を納得させて組織を変容させることはできないと、多くのリーダーたちが気づき始めています。
「今までのやり方は通用しないことがわかった」「でも、どうしていいかの代替案がない」……そんな心あるリーダーたちへの朗報が、アーノルド・ミンデルが提唱する「ワールドワーク」という、集団の変容のための考え方です。

ミンデルが使う「魔法」を少し種明かししておきます。まずは対立に関してですが、
彼はいわゆる調停のようなやり方を取りません。むしろ隠されていた対立を歓迎して赤
裸々な会話が起きるようにします。そしてそれぞれが、相手側の立場への気づきを育む
ことをミンデルは助けます。
次に変容についてです。ミンデルは個人であれ集団であれ、慣れ親しんだものと、馴
染みがなくて現れ出ようとするものがあると考え、その2つの間にある目に見えない壁
をエッジと呼びます。この枠組みで状況を見立てながら、様々な介入を行うことで変容
を促します。

目次

第1部 理論と手法
 第1章 混乱の渦中で
 個人の責任/プロセスのアイディア
 第2章 フィールド理論
 フィールド理論/感情と集団/フィールドの特徴――情報の漂流/フィールドがメンバーのアイデンティティを組織する/フィールド には境界がない/フィールドは力として感じられる/フィールドには多数のチャンネルがある/フィールドには人間のような特徴がある/フィールドとはドリームボディである/フィールドは進化する/思考実験
 第3章 タイムスピリット
投影とプロセス/役割とタイムスピリット/変容するタイムスピリット/スペース(空間の)スピリット/フィールドエクササイズ
 第4章 フィールドへの介入
混乱と自己均衡化アトラクター/フィールドは自己均衡化する/知恵と自己均衡化/エッジと自己不一致の症状/アウェアネス/感じ取る/集団のアウェアネスに取り組む/分類する/タイムスピリットとスペーススピリットを特定する/客観性と中立性ロールスイッチ/モデルとしてのファシリテーター/エッジ/天気予報/意識状態の変化/パワーの盛衰/そのひと個人であること/調和は役に立たないことがある/将来を推定する/集団的無意識/ブランクアクセス/教えること/1 集団のエッジ/2 集団における問題の分類/3 ウェザーリポート/4 急速な状態の変化

第2部 リーダーシップのメタスキル
 第5章 武道家としてのリーダー
役割としてのファシリテーター/集団のエネルギーから学ぶ/セルフバランス/隠れた気と2次プロセスに従う/自然を愛すること/デタッチメント/薪を燃やす/対立の経験を積む/対立を自らの運命として受け入れる/ひとつの例/攻撃者を支援する/南アフリカの例/対立と攻撃に関するファシリテーションのエクササイズ
 第6章 ディープ・デモクラシーとインナーワーク
攻撃を予期する/プロセスワーカーとしてのリーダー/リーダーの無意識/草の根のリーダー/ワールドワークとインナーワーク/南アフリカの内側と外側/質問/エクササイズ
 第7章 混乱の中のタオイスト
物理学と心理学におけるアウェアネス/アウェアネスと変化/混乱のパターンとエッジ/混乱の渦中で/質問

第3部 グローバルワーク
 第8章 葛藤解決の実践
葛藤解決の段階1 回避vs理解/葛藤解決の段階2 気づく/葛藤解決の段階3 悪質性の判断/葛藤解決の段階4 関与することを意識的に選択する/葛藤解決の段階5 対立の相手に取り組む/葛藤解決の段階6 アウェアネスをプロセスする/葛藤解決の段階7 自分の味方をする/葛藤解決の段階8 中立の立場へとディエスカレートする(沈静化)/葛藤解決の段階9 自然と中立的になる/葛藤解決の段階10 相手の側に立つ/葛藤解決の段階11 サイクリング/葛藤解決の段階12 フィールドを離れる/葛藤解決の段階13 集団でのワーク/葛藤解決の段階14 個人でのワーク/まとめ/葛藤解決のエクササイズ
 第9章 マイノリティのアウェアネス
マイノリティ問題の否定/マイノリティのメンバーと集団の極端な意識状態/メタコミュニケーターの不在/マイノリティのアウェアネス/マイノリティの立場の心理/励まし/1 あなたのモンスターを知る/2 モンスターに餌を与える/人道的で恩着せがましい/お祭り好き/形式ばっている/抑圧的/人種差別的/宗教的/3 インナーワークを行う/4 自分の側に立つ/人前で自分の立場をプロセスする/5 ロールスイッチ/6 愛する/質問
 第10章 カーストと人種差別のシステム
人種差別と部族主義/カースト制度/不可触民/タイムスピリットとしての人種差別/分離主義と差異/人種・宗教的緊張をプロセスする/質問
 第11章 女性と男性
条約と解決策/エクササイズ
 第12章 路上とエコロジー
エコロジーと健康/エコロジーとシンクロニシティの効果/優れたエコロジー/リーダーは死ななければならない/地球への奉仕/ポートランドの路上生活者/エクササイズ

第4部 宇宙の可能性
 第13章 心の反転とヒーリング
時間を遡る/ファインマンのフィールドにおける電子のモデル/「二重身」の生成/時間と心の反転/内的経験と外的事象/グローバルな意味と結合した事象/時間を遡るエクササイズ
 第14章 アウェアネスとエントロピー
自己均衡化と自滅/物理学におけるエントロピー的な破壊/マクスウェルの悪魔/アウェアネスとエネルギー/歴史、変化、アウェアネス
 第15章 ディープ・デモクラシー
病気と対立/自己均衡化とアウェアネス/地球の未来/新しい神話とアウェアネス/ディープ・デモクラシー/都市のエルダーたち/エルダーの悩み

著者略歴

著:アーノルド・ミンデル
著作に、『ドリームボディ―自己(セルフ)を明らかにする身体』(誠信書房 2002)、『プロセス指向のドリームワーク―夢分析を超えて』(春秋社 2003)、『Quantum Mind』、『シャーマンズボディ―心身の健康・人間関係・コミュニティを変容させる新しいシャーマニズム』(コスモス・ライブラリー 2001)ほか。夢とボディワーク、ユング療法とグループプロセス、意識、シャーマニズム、量子物理学、葛藤解決などを統合した革新的なアプローチで、世界中で知られている。米国内外を広く旅し、ワークショップを開催するほか、専門家会議やテレビ・ラジオ番組にも多数出演。現在は、オレゴン州ポートランドに在住。
訳:松村 憲
バランスト・グロース・コンサルティング株式会社取締役、日本プロセスワークセンター教員、認定プロセスワーカー、国際コーチング連盟認定PCC
プロセスワーク理論を活用した組織開発コンサルティングやエグゼクティブコーチングの日本でのパイオニア。組織文化の変容や、組織における人間関係、葛藤解決などを得意領域とする。
訳:西田 徹
バランスト・グロース・コンサルティング株式会社取締役、国際コーチング連盟認定PCC
リクルート、ボストン・コンサルティング、MBAの経験から来る左脳的なスキルと、プロセスワークの深淵な右脳的叡智を統合する「総合格闘技型」組織開発・エグゼクティブコーチングを標榜している。

ISBN:9784820729716
出版社:日本能率協会マネジメントセンター
判型:A5
ページ数:356ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB