岩田慶治を読む
今こそ〈自分学〉への道を
編:松本 博之
編:関根 康正
内容紹介
「存在論的転回」が人文学を揺るがしているという。しかし,南米の先住民研究に触発された存在論的アニミズム論はほんとうに新しいのか? いや,もっと有体に言えば,人間中心主義を批判しながら南米先住民社会の自然と人間の対称性を再び人間(人格)モデルを用いて外から解釈したに過ぎない。岩田慶治は,すでに1970年代,当時の挑戦的と言われた人類学者でさえ絶句した,人と草木虫魚の一体性を説いた。しかもそれは,草木虫魚とともに生きる東南アジアの人々の精神世界に,外からの解釈でなく,自己を投げ出す「参与」という実践の中から生まれたのだ。いまこそ〈自分学〉として成された新アニミズム論を評価し,狭い「学」としてでなく,我々の生き方の知として学ぶ時なのだ。
目次
序──赤裸の人として世界と遭遇し自己を再発見するために[編者]
第1編 研究──岩田慶治の仕事とその継承
プロローグ 五〇年目のラオス──岩田慶治調査村を再訪する
[松本博之・池口明子・岡本耕平・野中健一]
1──パ・タン村訪問
1 パ・タン村まで
2 パ・タン村とアルバム
3 トンチャン先生との再会
4 パ・タン村の人の動き
2──パ・タン村の古今
1 村のたたずまい
2 ありし日の姿
3 グローバル化のシンボル
3──ソムサワット村へ
1 国道沿いの新村
2 ヤオの人びとの服装
3 村のたたずまい
4 人のたたずまい
5 村のゆくえ
第1章 非自然(ほんとうの自然)を描く──感性の論理にむけて[松本博之]
1──非自然とは
2──岩田アニミズム論のフレームワーク
3──非自然への接近
4──欧米系「アニミズム論」との対比
1 ヴィヴェイロス・デ・カストロとデスコラ
2 アニミズムと社会学主義
3 インゴルド
5──「鳥獣戯画」の世界
6──岩田アニミズム論──非自然を描く
第2章 岩田慶治の存在論的人類学のアクチュアリティ──〈柄と地〉理論と自己「参与」[関根康正]
1──「昼の夜」と「夜の夜」の二重のまなざし
2──「南」からの〈普遍〉による現代社会の問い直し
3──〈柄と地〉理論と自己「参与」の人類学
1 自分発見の八段階(八視角)
2 ビーズの首飾りを捜すための〈柄と地〉理論
3 「地の地」、それは自他の 「同時現成」 の場所ら読み直す
4 〈柄と地〉理論をケガレ論か
4──宇宙人間になる──自分学という一人からの革命
第3章 岩田慶治の「宗教」と「宗教文化」──離見の見をめぐって[長谷千代子]
1──岩田学との出会い
2──佐々木と岩田の「宗教文化」観
3──生の全体性への私の参与
4──離見の見と宗教
5──私の立ち位置
第4章 今日の岩田慶治──柄と地をめぐって[西垣 有]
1──岩田慶治のいう「柄と地」
2──ルース・ベネディクト『文化の型』とゲシュタルト
3──クリフォード・ギアツ『文化の解釈』とポストモダン人類学
4──ロイ・ワグナー『文化のインベンション』と「存在論的転回」
5──結にかえて──岩田慶治の見た宇宙
第5章 岩田慶治「自分学」の地平──【岩田慶治著作集月報】より[松本博之(編)]
1──疾風怒濤時代(Strum und Drang)
2──読書人からのメッセージ
3──岩田「自分学」の地平
4──宗教学者の琴線の響き
付
第2編 臨地(フィールド)──岩田慶治の世界を写真で読む[写真・岩田慶治/文・松本博之]
初めての異世界
バンコク事始め
環境と民族
生態的環境と生業
民家と居住
様式
稲作と農具
村の暮らし
服装と飾り物
農耕の儀礼
家と村を守る
人生の儀礼
収穫祭と新年祭り
食とマーケット
水上都市バンコク
新たな旅路、更なる旅路
第3編 人生──関係資料
【資料1】略歴および海外調査歴
【資料2】岩田慶治著作目録(抄)
【資料3】「岩田慶治先生追悼シンポジウム」フライヤー
【資料4】「岩田慶治を語る会」記録
あとがき[編者]
索引
ISBN:9784814004508
。出版社:京都大学学術出版会
。判型:A5
。ページ数:362ページ
。定価:4600円(本体)
。発行年月日:2022年12月
。発売日:2022年12月06日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHMC。