日文研叢書
記念植樹と日本近代
林学者本多静六の思想と事績
著:岡本 貴久子
内容紹介
ひとはなぜ樹木を植えるのか―。
近代は、実利的な造林計画、あるいは都市美運動などさまざまな場面で記念植樹が大いに奨励された時代であった。
近代日本で行われた「記念植樹」を、個別の歴史事象、林学の創成と展開など時代背景と照合しながら、その活動の主導的立場にあり、方法論を構築した林学者・本多静六に注目し、彼の生家の富士山信仰・不二道の思想的影響も視野に入れながら、近代国家形成のあゆみに記念植樹を位置づける。
目次
序章
一 なぜ記念植樹か―出版物や報道による社会への普及・啓発―
二 研究の現状
三 本書の構成
第Ⅰ部 「記念植樹」とはなにか―形態と歴史的諸相―
第一章 記念植樹の形態
第一節 「記念」に樹を植えるという行為
第二節 記念植樹の形態―記念樹・記念並木・記念林―
第二章 記念植樹をめぐる歴史的諸相
第一節 前近代と近代をむすぶ記念樹の文化史
第二節 古典からよむ記念植樹―記念植樹における儀式性と実践性の由来―
第三節 霊木信仰と神仏習合
小 括 語り継がれる「いのち」の記念樹
第Ⅱ部 林学者本多静六の思想
第一章 不二道の歴史と思想
第一節 折原家の由緒と「不二道」
第二節 近世富士山信仰史とその思想
第三節 小谷三志の不二道の思想
第四節 近代社会への移行期における不二道の変遷
第五節 不二道孝心講のあゆみ
小 括 本多静六と不二道
第二章 本多静六と明治の林学・林政
第一節 東京山林学校と明治の林政
第二節 ドイツにおける林学と自然思想―「森づくりは科学であり芸術である」―
第三節 本多の西洋思想の受容と展開
第四節 ドクトル本多静六の誕生
小 括 本多静六の思想形成とその展開
第三章 本多造林学における記念植樹の理念と方法
第一節 諸外国における樹木に関する本多の見聞
第二節 記念植樹の空間と思想
第三節 樹種選択と日本の風土―老樹名木を理想に―
第四節 『植樹デーと植樹の功徳』にみる本多の人生哲学
第五節 記念植樹の広がり―宗教的教育と実践―
小 括 本多静六の記念植樹の特徴―生きたる記念碑―
第Ⅲ部 「記念植樹」の近代日本―明治~大正~昭和の系譜―
第一章 学校教育と記念植樹
第一節 米国における学校樹栽活動の展開
第二節 明治期における学校樹栽の普及と展開
第三節 本多静六『學校樹栽造林法』にみる理念と方法
第四節 本多の造林学における学校樹栽の要素
第五節 明治日本でなぜ学校樹栽が栄えたか
小 括 明治期の学校樹栽に見る形と心
第二章 御聖徳と記念植樹―明治から大正へ―
第一節 御聖徳記念と明治神宮
第二節 明治神宮造営における葬場殿址の記念樹
第三節 御聖徳記念と即位の御大典記念
第四節 南方熊楠の批判
第五節 明治神宮の森づくり―記念碑性を手がかりに―
小 括 明治神宮の森と不二道孝心講の記憶
第三章 平和と記念植樹―第一次世界大戦後の平和記念事業を主体に―
第一節 帝国森林会の発足―大日本山林会とともに―
第二節 帝国森林会の歴史と本多静六の位置
第三節 平和記念植樹の理念と方法
第四節 帝国森林会における記念林の運営
第五節 平和記念東京博覧会と帝国森林会の記念樹
小 括 平和と記念植樹―いのちの寿ぎ―
第四章 帝都復興と都市美運動―都市緑化の理念と方法―
第一節 関東大震災と帝都復興
第二節 都市美運動の成立とその背景
第三節 日本の都市美協会の活動とその展開
第四節 東京の都市美運動における「植樹デー」
小 括 「土着化」した都市美運動
第五章 「大記念植樹」の時代―昭和戦中期の時局を基軸に―
第一節 皇紀二六〇〇年記念事業における植樹活動
第二節 「大多摩川愛桜会」の記念植樹―田園調布の桜―
第三節 桜の多摩川づくり―儀式と実践―
第四節 国際親善と記念植樹
第五節 日本の戦時統制下における記念植樹―精神性と機能性―
第六節 忠霊と記念植樹―英霊に捧げる母の祈り―
終 章 記念植樹と日本人―ひとはなぜ樹を植えるのか―
一 記念植樹の心と形
二 山の信仰と本多静六の記念植樹
三 近代日本における記念植樹の系譜
四 「荒れた国土に緑の晴れ着」―生き残った愛樹心―
初出一覧
あとがき
掲載図版一覧
索引(人名・事項)
ISBN:9784784218431
。出版社:思文閣出版
。判型:A5
。ページ数:580ページ
。定価:9000円(本体)
。発行年月日:2016年04月
。発売日:2016年04月10日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TQS。