◆ 子規の写生、漱石の則天去私、虚子の花鳥諷詠
虚子は、俳誌「ホトトギス」を通して、栄えゆくもの衰えゆくもの、ただありの儘にじっと眺めてゆくのである。表現の新しさを競う、見せ場を作るのではなく、ありふれた日常に敬意を払う、そんな作品世界に到達したのである。漱石の「則天去私」からバトンを受け継いだ虚子の「花鳥諷詠」は、近代という時代からはこぼれ落ちそうな、ひそやかな願いや祈り、素朴な信心を守り育て、そうした思索と詩作の営みを縫い込んだ大いなる物語(場所)となったのだ。(「則天去私と花鳥諷詠」より)