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新材料・新素材

遷移金属ダイカルコゲナイドの基礎と最新動向

監:宮田耕充
監:吾郷浩樹
監:松田一成

紙版

内容紹介

二次元層状物質として多彩な物性や機能が注目される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDについてまとめた1冊。TMDの基礎事項と合成・構造制御について網羅し,トランジスタや発光デバイスなどの応用動向を取り上げる。

目次

【第1編:構造と物性】

第1章 構造と電子状態
1 はじめに
2 単層TMDの電子状態
 2.1 低エネルギー有効ハミルトニアンとエネルギーバンド
 2.2 ベリー曲率の効果
3 単層TMDの光物性とバレー物性
 3.1 光学応答の選択則
 3.2 励起子
 3.3 バレー物性
4 ファンデルワールスヘテロ構造
 4.1 電子状態:タイプII構造
 4.2 層間励起子
 4.3 層間励起子の特徴
5 モアレ系の光物性
 5.1 モアレ超格子構造
 5.2 モアレポテンシャルとモアレ励起子
 5.3 モアレ励起子の選択則
 5.4 モアレハバード物理
6 まとめ

第2章 電子顕微鏡観察
1 はじめに
2 単層遷移金属ダイカルコゲナイドの多相系
3 電子分光(EELS)による元素分析
4 単層遷移金属ダイカルコゲナイドのエキシトン分散関係測定
5 二次元材料のヘテロ積層構造における吸収スペクトルのツイスト角依存性
6 1次元・2次元ハイブリッド超格子
7 まとめ

第3章 第一原理計算と電子構造
1 はじめに
2 2層TMDの電界効果
3 2層TMD面内ヘテロ構造の電子物性
4 2層ヤヌスTMDの電子構造
5 まとめ

第4章 角度分解光電子分光による電子構造観測
1 はじめに
2 角度分解光電子分光による2次元結晶の電子構造研究
3 機械的剥離によって得られる原子層WTe2の電子構造の直接観測
 3.1 角度分解光電子分光測定用の試料作製および実験条件
 3.2 電子状態の層数依存性
 3.3 積層秩序がもたらす結晶構造の非対称性
4 おわりに

第5章 二次元半導体ヘテロ構造におけるモアレの物理と光科学
1 はじめに
2 二次元半導体の光学的性質と二層ヘテロ構造のモアレ超格子
3 二次元半導体二層ヘテロ構造の光学的性質
4 モアレ励起子の微細構造
5 モアレ励起子のダイナミクス
6 二次元半導体二層ヘテロ構造の微細加工
7 二次元半導体二層ヘテロ構造のモアレ荷電励起子(トリオン)
8 モアレ荷電励起子(トリオン)のダイナミクスと微細構造
9 まとめ

第6章 ラマン分光
1 ラマン分光とは
 1.1 ラマン分光の概要
 1.2 ラマン分光の原理
 1.3 ラマン分光装置
 1.4 ラマン活性モード
2 遷移金属カルコゲナイド物質のラマンスペクトル
 2.1 ラマンスペクトルの概要
 2.2 ゾーンセンターモード
3 円偏光ラマン分光とラマンテンソル
4 共鳴ラマン分光
5 二重共鳴ラマン分光スペクトル
6 ゲート変調ラマン分光法
7 まとめ

第7章 励起子輸送
1 はじめに
2 単層TMDC横ヘテロ構造における指向性励起子輸送
 2.1 WSe2 -MoSe2 横ヘテロ構造における指向性励起子輸送
 2.2 組成が徐々に変化するWS2x Se(2-2x)混晶における指向性励起子輸送
3 おわりに

第8章 格子不整合に積層した遷移金属ダイカルコゲナイドの熱伝導
1 はじめに
2 原子層物質が人為的に積層された系の熱伝導の概略
3 金をトランスデューサとした時間領域サーモリフレクタンス計測システムの構築
4 4層積層したTMDC原子層の熱伝導
5 最近の人工積層系の熱伝導
6 おわりに

第9章 電界誘起超伝導
1 はじめに
2 電界効果トランジスタと電界誘起超伝導
3 TMDにおけるイジング超伝導
4 おわりに

第10章 遷移金属ダイカルコゲナイドの対称性と量子力学的整流現象
1 はじめに
2 MoS2界面電解誘起超伝導相における整流現象
3 WS2ナノチューブにおける超伝導整流特性
4 3R-MoS2における光起電力効果
5 ヘテロ界面や一軸性歪み印加試料における光起電力効果
6 まとめと展望

第11章 半導体モアレ格子における強相関電子
1 はじめに
2 励起子を利用した電子系のセンシング
3 サブバンドの検出と強相関電子状態
4 電子結晶化の励起子ウムクラップ散乱による検出
5 まとめと展望

第12章 トポロジカル電子状態
1 はじめに
2 トポロジカル電子状態とは
3 トポロジカル絶縁体
4 トポロジカル半金属・トポロジカル超伝導体
5 おわりに

【第2編:合成・構造制御】

第13章 遷移金属ダイカルコゲナイドのバルク単結晶成長
1 はじめに
2 TMDCの構造
3 TMDCのバルク単結晶成長
 3.1 石英アンプルの準備
 3.2 原料と輸送剤の準備
 3.3 石英アンプルの真空封止
 3.4 管状炉での石英アンプル加熱
 3.5 加熱後の冷却,試料取り出しと洗浄

第14章 剥離と転写
1 はじめに
2 テープによる剥離
3 ファンデルワールスヘテロ構造の作製法(基本)
 3.1 ボトムアップの作製法
 3.2 トップダウンの積層
4 ファンデルワールスヘテロ構造の作製法(発展)
 4.1 Tear-and-stack法
 4.2 フリップ法
5 まとめ

第15章 化学気相成長法
1 はじめに
2 TMD CVD成長の基礎
3 アルカリ金属アシスト
4 アルカリ金属アシストの応用①: MoS2 p-n接合の実現
5 アルカリ金属アシストの応用②: 結晶相制御されたWS2の成長
6 おわりに

第16章 化学気相成長:ドーピング
1 TMDCへの置換ドーピング
2 CVD法によるドープ型TMDCの合成
 2.1 混合遷移金属酸化物を前駆体としたCVD法
 2.2 ハロゲン化物を前駆体としたCVD法
2.3 水溶性化合物の塗布膜を前駆体としたCVD法
 2.4 有機金属化合物を前駆体としたCVD法
 2.5 混合カルコゲンを前駆体としたCVD法
3 まとめと展望

第17章 化学気相成長:ヘテロ構造
1 はじめに
2 面内ヘテロ構造作製技術の進展
3 CVDで作製した積層ヘテロ構造の特徴
4 一次元ファンデルワールスヘテロ構造
5 原子置換/脱カルコゲン処理によるヘテロ構造形成
6 むすび

第18章 原子打ち込みによる二次元半導体のドーピング
1 はじめに
2 電子デバイスにおけるドーピング
3 二次元半導体への置換ドーピング
4 ドープTMDの構造評価
5 ドープTMDのデバイス特性
6 まとめ

第19章 化学ドーピング等による遷移金属ダイカルコゲナイドの物性制御とデバイス応用
1 はじめに
2 TMDの化学ドーピング
3 WSe2への分子ドーピング
4 TMDと有機無機ペロブスカイトのヘテロ構造
5 まとめと今後の展開

第20章 遷移金属ダイカルコゲナイドナノチューブの構造制御および組成制御
1 はじめに
2 TMDNTの形成と電子構造
3 TMDNTの合成と構造制御の現状
4 TMDNTの構造制御:分離精製と合成
5 TMDCNTの組成制御:合成
6 TMDCNTの形成機構
7 おわりに

【第3編:応用】

第21章 電界効果型トランジスタ
1 はじめに
2 トランジスタ構造の変遷と二次元材料への期待
3 TMDCの極微細FET応用へ向けた最新研究動向
4 層状物質を用いたコンタクト技術
5 今後の課題と展望

第22章 トンネル電界効果型トランジスタ
1 はじめに
2 Si系をベースとした低消費電力デバイスの現状
3 2次元系の特徴:2D/2D電気的不活性界面
4 2D-トンネルFET
5 TFETの現状と将来展望

第23章 層間トンネル電流の解析
1 はじめに
2 層間バンド内トンネル
3 層間バンド間トンネル
4 強束縛近似に基づく解析

第24章 強誘電体の設計
1 序論
2 強誘電性の設計:理論的背景
3 強誘電性の検出
 3.1 グラフェンを用いた電気的検出
 3.2 実空間観測
 3.3 電気伝導測定・光学測定
4 モアレ強誘電性
5 まとめと今後の展望

第25章 遷移金属ダイカルコゲナイドのスピントロニクス機能
1 はじめに
2 スピントロニクスとは〜スピン流を中心に〜
3 TMDにおけるスピントロニクス機能とその計測
4 まとめ

第26章 電気二重層トランジスタと熱電デバイス
1 はじめに
2 熱電変換効果(ゼーベック効果)の基礎
3 電気二重層トランジスタ(EDLT)
4 グラフェンを用いた熱電デバイス
5 TMDC単層膜を用いた熱電デバイス
6 まとめ

第27章 発光デバイス
1 はじめに
2 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDCs)の光機能
3 TMDCsを用いた発光デバイス
 3.1 単層TMDC発光デバイス
 3.2 ヘテロ構造発光デバイス
4 TMDC発光デバイスの新機能
 4.1 円偏光発光デバイス
 4.2 波長可変発光デバイス
5 TMDC発光デバイスの今後の展望
6 まとめ

第28章 数層遷移金属ダイカルコゲナイドの高透明太陽電池応用
1 研究の背景
2 半透明TMD太陽電池開発
3 高透明TMD太陽電池開発
4 まとめと今後の展望

第29章 バルク光起電力効果
1 はじめに
2 従来の光起電力効果の原理と限界
3 バルク光起電力効果(BPVE)と対称性
4 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)の対称性
5 TMDの対称性の違いがBPVEに与える影響
6 BPVEの微視的メカニズム
7 二次元物質を用いたBPVE研究の可能性

第30章 二次元材料表面を運動する液滴による発電現象
1 はじめに
2 大面積・単層MoS2発電デバイスの作製と評価
3 発電機構と起電力
4 MoS2発電デバイスの応用
5 まとめと今後の展望

第31章 遷移金属ダイカルコゲナイドの触媒としての活用
1 はじめに
2 遷移金属ダイカルコゲナイド材料による水素発生反応
 2.1 水素発生反応の素反応
 2.2 水素吸着自由エネルギー
 2.3 遷移金属ダイカルコゲナイドナノシート
 2.4 歪みと硫黄空孔の導入
 2.5 ドーピング
3 他の遷移金属カルコゲナイド材料
 3.1 ヘテロジャンクション
 3.2 ヤヌスナノシート
 3.3 モアレ超格子
4 計測技術
 4.1 走査型トンネル顕微鏡
 4.2 走査型電気化学セル顕微鏡

第32章 化学処理と発光増強
1 はじめに
2 単層TMDC群の発光増強
 2.1 電子濃度の変調による発光増強
 2.2 化学結合を伴う表面処理による発光増強
 2.3 超酸処理による発光増強
 2.4 そのほかの化学的手法による発光増強
3 まとめと展望

第33章 自己組織化膜形成
1 まえがき
2 層状物質表面におけるペプチドの自己組織化
2.1 固体吸着ペプチド
2.2 各種の層状物質上で規則正しい構造に自己組織化するペプチド
2.3 ペプチドの表面分子認識
3 二硫化モリブデン(MoS2)のバイオセンサ応用に向けた表面修飾
4 まとめと今後の展望

ISBN:9784781317588
出版社:シーエムシー出版
判型:B5
ページ数:326ページ
定価:61000円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TJF