出版書誌データベース

フィールドとはいったい何か。フィールドワーカーとは誰のことをいうのか。フィールドワークとはいかなる行為なのか。フィールドワークによって私たちはいかなる経験を得ようとしているのか。フィールドワークで何が認識されようとしているのか。フィールドワークとはいかなる営みか。COVID-19流行後にいかなるフィールドワークが可能なのかをさまざまなフィールドに身をおいてきた論者たちが原点に立ち戻り、考察する。

文化人類学・地理学・社会学・観光学の領域を横断しながら、フィールドワーカーたちが考える、パンデミック以後の、これからのフィールドワーク。


■執筆者紹介（*は編者）

遠藤 英樹*（えんどう ひでき）
立命館大学 教授
担当：まえがき・Chapter 1

石野 隆美（いしの たかよし）
立教大学 博士後期課程
担当：Chapter 2

東 賢太朗（あずま けんたろう）
名古屋大学 准教授
担当：Chapter 3

市野澤 潤平（いちのさわ じゅんぺい）
宮城学院女子大学 教授
担当：Chapter 4

橋本 和也（はしもと かずや）
京都文教大学 名誉教授
担当：Chapter 5

寺岡 伸悟（てらおか しんご）
奈良女子大学 教授
担当：Chapter 6

神田 孝治（かんだ こうじ）
立命館大学 教授
担当：Chapter 7

藤巻 正己（ふじまき まさみ）
立命館大学 名誉教授
担当：Chapter 8

須藤 廣（すどう ひろし）
法政大学 教授
担当：Chapter 9

山本 理佳（やまもと りか）
立命館大学 教授
担当：Chapter 10

安田 慎（やすだ しん）
高崎経済大学 准教授
担当：Chapter 11

堀野 正人（ほりの まさと）
二松学舎大学 教授
担当：Chapter 12

渡部 瑞希（わたなべ みずき）
帝京大学 講師
担当：Chapter 13

松本 健太郎（まつもと けんたろう）
二松学舎大学 教授
担当：Chapter 14

まえがき　遠藤 英樹

Chapter 01　風に吹かれて
　中動態としてのフィールドワークによる「新しい実在論」　遠藤 英樹

1　はじめに
2　中動態とは何か：風に吹かれて
3　中動態としてのフィールドワークによる「新しい実在論」
4　むすびにかえて：されどわれらが日々のフィールドワーク

Chapter 02　0は少なすぎるが1つは多すぎる
　フィールドワーカーの個的輪郭をめぐる人類学的省察　石野 隆美

1　はじめに：未完の主体としてのフィールドワーカー
2　関係のなかで可視化される個
3　0と1の間
4　おわりに：「開＝示」する知へ向けて

Chapter 03　わからなさ，つながり，事件の発生
　フィリピンの呪術と観光のフィールドワークから　東 賢太朗

1　はじめに
2　呪術のフィールド
3　観光のフィールド
4　おわりに

Chapter 04　野生のフィールドワーク
　実験室の外側で　市野澤 潤平

1　はじめに：文化人類学のフィールドワークは観光に似ている？
2　野生のフィールドワーク：非–実験室的な場における非-実験室的な実践
3　野生のフィールドワークの創造性
4　おわりに：実験室化への圧力に抗して

Chapter 05　存在論的世界とフィールドワーカーの実存
　徒歩旅行者に「生成」すること　橋本 和也

1　人類学者と民族誌家：自己の成長・変容過程をめぐって
2　「人類学をする」こと：輸送ではない，狩人の徒歩旅行
3　歩きながら考え，道を辿りながら知が形成される
4　フィールドで歩く経験が私を鍛え，創る
5　存在論的「ホーム・フィールドワーク」：「動物に生成する」廃墟歩き

Chapter 06　非在のフィールド，不在のフィールド
　パンデミック下の日常から考える　寺岡 伸悟

1　はじめに
2　「非在」のフィールド
3　「不在」のフィールド
4　存在と空間
5　「未在」のフィールドワークへ

Chapter 07　あわいから問うフィールド
　COVID-19を契機としたフィールドワーク再考　神田 孝治

1　フィールドワークとはいかなる実践か
2　地理学におけるフィールドワーク
3　COVID-19時代の経験からフィールドワークを再考する

Chapter 08　ジオグラファー×フォトグラファーの「語り」
　マレーシアにおけるフィールドワーク経験と写真撮影　藤巻 正己

1　コロナ禍のフィールドワーカー
2　私のマレーシア研究
3　ジオグラファー×フォトグラファー：フィールドにおける私の方法
4　休みなきフィールドワーカー

Chapter 09　観光とフィールドワークは現象へと開かれているのか
　観光者とフィールドワーカーのパフォーマンスの同型性について　須藤 廣

1　はじめに
2　観光経験における過程への注目
3　参与する観光者の経験とフィールドワーカーの経験
4　まとめ

Chapter 10　フィールドワーク的観光の可能性
　親密性をめぐる一試論　山本 理佳

1　はじめに
2　観光の有様と大学の観光教育
3　フィールドワークとは何か
4　教育経験における試論
5　むすびにかえて

Chapter 11　トラベル・ライティングが生み出す魔力
　コンタクト・ゾーンとしてのE・レインのエスノグラフィー　安田 慎

1　はじめに
2　語り継がれるエドワード・レインの旅行記
3　コンタクト・ゾーンとしてのE・レインのエスノグラフィー
4　おわりに

Chapter 12　観光研究のフィールド
　「現実」と「仮想」の間に生成する空間／場所　堀野 正人

1　はじめに
2　観光研究のフィールドの多様性
3　空間／場所としてのフィールド
4　現実と仮想が重なりあうフィールド
5　上書きされるフィールド
6　おわりに

Chapter 13　オンライン調査によるフィールドワークの可能性
　オンラインツアー，オンライン交流会，Zoomを活用したライフヒストリーの事例から　渡部 瑞希

1　はじめに
2　オンライン調査だけでFWが完結しない要因
3　オンライン調査の可能性としてのライフヒストリー
4　おわりに

Chapter 14　モノを参照するモノのイメージ
　メディアが紡ぐ観光空間のインターテクスチュアリティ　松本 健太郎

1　はじめに：「観光」と「メディア」の交錯によって浮上する新たなフィールド
2　多層化するコンテクスト：久慈市での体験から
3　時間的＝空間的にリニアな体験を提供するコンテクスト：竹富島での水牛車体験から
4　メディアが観光に付与するコンテクスト：YouTubeの旅行系コンテンツの視聴体験から
5　結びにかえて：メディアが紡ぐ観光空間のインターテクスチュアリティ

事項索引
人名索引

編：遠藤　英樹
1963年生まれ。関西学院大学社会学部卒業、同大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学。社会学修士。現在、立命館大学文学部教授。観光社会学・現代文化論専攻。『ガイドブック的！　観光社会学の歩き方』（春風社、2007年）、『現代文化論』（ミネ ルヴァ書房、2011年）、『メディア文化論』（編著、ナカニシヤ出版、2013年）、他。