アメリカ先住民史上「最も過酷な運命」を辿ったとされる
カリフォルニア州の先住民部族の一つ、トュールリヴァー部族の部族史。
カリフォルニアの先住民は、連邦政府との条約締結の失敗、
土地基盤の喪失、急激な人口減少(19 世紀初頭に経験した伝染病、
戦争、ゴールドラッシュ、強制移住の影響)、都市化とアイデンティティの
周縁化によってアメリカ社会の中で不可視化され、1930 年に連邦承認を
受けるまで、まさに法的、政治的に「見えざる部族」であった。
本書はスペインとの接触以前におけるカリフォルニア先住民社会を起点とし、
連邦部族承認を受けた1930 年代のトュールリヴァー部族社会を終点として、
スペイン、メキシコ、アメリカ時代における同部族の経験を時系列的に描く。
元来「文字」を持たないトュールリヴァー部族の人々の歴史を復元すべく、
文書資料(史料)に加え、部族の構成員とその子孫による「記憶」と「語り」を
用いることにより、公文書の中で歴史を「失った」部族の歴史記述に
新たな可能性を開いた労作。