『民家日用廣益秘事大全』は、嘉永四年(一八五一)に発刊された庶民のための生活百科。本書はそれをわかりやすく現代語訳したものである。刊行された嘉永年間、いわゆる幕末は諸外国から入って来た新しい知識が都市部では普及した一方で、山村僻地ではいまだに無知な故に貧困や病などに苦しめられていた。そのため、これを憂えた浪華の三松館主人と名乗る人物が、民衆に有益な知識を与え、日用の急を救うことを目的として編纂にあたった。集められた情報は、日常生活の知識全般を網羅し、病気の治療はもとより、農業、気象、住まい、衣服、暦、占い、料理など十七分類、約一千項目に及ぶ。これらは現代では役に立たないものが多いとはいえ、そこに取り上げられたものからは、恋の成就を願い、健康を喜び、おいしい料理を工夫するといった、いつの時代にも変わらぬ人々の必死な思いが垣間見える。庶民の健気さ、逞しさを改めて感じることができる一書。