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複雑性PTSDとは何か

四人の精神科医の座談会とエッセイ

他著:飛鳥井 望
他著:神田橋 條治
他著:高木 俊介

紙版

内容紹介

複雑性PTSD(Complex post-traumatic stress disorder;CPTSD)とは,心身への組織的暴力,家庭内暴力や虐待など長期反復的なトラウマ体験の後にしばしば見られる,感情などの調整困難を伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。国際疾病分類(ICD-11)において初めてPTSDと区別された診断基準として記載され,診断名として2022年1月1日から正式に発効された。その診断基準は,否定的自己概念,感情の制御困難及び対人関係上の困難といった症状が,脅威感,再体験及び回避といったPTSDの諸症状に加えて認められることとされる。

本書は,『複雑性PTSDの臨床――心的外傷?トラウマの診断力と対応力を高めよう』(金剛出版,2021)の発刊に併せて行われた四人の精神科医による座談会の記録と書き下ろしエッセイを収録したものであり,複雑性PTSDに関する最新の正確な知識・経験を読者に提供しようとするものである。日常臨床への有効なヒントを提供するであろう。

目次

□第Ⅰ部 座談会
 複雑性PTSDの概念,歴史,その重要性
 トラウマ焦点化心理療法の考え方
 治療同盟をつくる
 複雑性の要素―虐待・DV・いじめ・災害
 トラウマ記憶を扱うという治療―効果と副作用
 複雑性PTSDと対人支援の姿勢
 PTSDになる人ならない人
 世の中に役に立たない経験なんていうのは一つもない
 ストレングスモデルの実践/治療としてのオープンダイアローグ
 治療関係の結び方
 緩和医療と複雑性PTSDの問題
 癌の告知がPTSDの原因になる
 パニック障害と複雑性PTSDの関連
 対人恐怖・強迫の背景にある複雑性PTSD
 精神疾患のリスクファクターとしての小児期の逆境体験
 差別,戦争・軍隊が複雑性PTSD的な現象を生みやすい
 文化の伝承―トラウマのパラドックス
 本来,道徳で人間関係の中で処理してきたものが「法律」になる
 PTSDと生物-心理-社会モデル
 対人支援者の傷つき
 二次的外傷ストレスについて
 逆転移と代理受傷
 代理受傷を防ぐ―セルフケア・職場内でのケア
 Folie a Deux : 二人組精神病
 やりすぎの医療制度の問題
 チーム医療の直面する状況
 支援者に対するソーシャルサポートのネットワーク
 開かれた関係という論理
 愚痴の言えない職場
 治療としてのダイアローグという考え方
 共同体の復活を目指す
 組織におけるリーダーの資質
 重いトラウマを持った当事者のオープンダイアローグの運営法
 対人援助者の受傷を予防する
 寄り添う,波長を合わせる
 臨死臨床の経験
 自分一人で抱え込まない

□第Ⅱ部 座談会を終えて
 「複雑性PTSDを語る」セッションを終えて:飛鳥井望
 「経験」となりえなかった「体験」:神田橋條治
 「世界は一個の大きな病院になる」ことから逃れて:高木俊介
 わたしの複雑性PTSD臨床―三八年間,素人なりに対応を試行錯誤してきた一精神科医の実践の紹介:原田誠一

ISBN:9784772418904
出版社:金剛出版
判型:4-6
ページ数:204ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2022年04月
発売日:2022年04月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MJ