慶應義塾大学地域研究センター叢書
伝統中国の地域像
編:山本英史
内容紹介
現代中国の社会システムに繋がる明清時代の中国(=伝統中国)の地域の姿を、近年ようやく公開されたオリジナル行政文書、地方の《トウ案》や《文契》《碑刻》などの史料を駆使し、歴史学の立場から検証する。
目次
序章 日本の伝統中国研究と地域像………山本 英史
はじめに
一 戦前の中国研究と地域像
二 戦後の発展段階論と地域像
三 地域社会論の提唱と発展
おわりに
第一章 通州・北京間の物流と在地社会………新宮 学
——嘉靖年間の通恵河改修問題をてがかりに——
はじめに
一 嘉靖七年の通恵河改修工事について
二 通州・北京間の物流に関わる人々
1 漕運に関わる人々
2 陸運に関わる人々
3 剥運に関わる人々
三 物流をめぐる市場と利害の調整
1 物流をめぐる市場と身分的特権者層
2 在地社会の様々な利害の調整
結びにかえて
第二章 「老爺」と「相公」………岸本 美緒
——呼称から見た地方社会の階層感覚——
はじめに
一 「老爺」の用法
1 ヨーロッパ人の見た「ロウテア」
2 「老爺」と呼ばれる人々
3 「老爺」と呼ぶ人々
4 「老爺」呼称の始まり
二 「相公」の用法
1 「相公」呼称の対象
2 「相公」の条件
三 地方社会の勢力変動と「老爺」呼称
おわりに
第三章 清代康煕年間の浙江在地勢力………山本 英史
はじめに
一 時代・地域・史料
二 地方官僚から見た在地勢力
1 「蠹」と表現されるもの
2 「豪」で表現されるもの
三 州県統治と在地勢力
1 在地勢力の相互関係
2 地方官僚と在地勢力
3 清朝支配の確立と浙江
おわりに
第四章 長関・斗頭から郷保・約地・約練へ………三木 聰
——福建山区における清朝郷村支配の確立過程——
はじめに
一 郷保・約地・約練
二 長関と斗頭
三 保甲・団練と鉄砲狩令
おわりに
第五章 清代中期の広府人社会と客家人の移住………片山 剛
——童試受験問題をめぐって——
はじめに
一 戸籍制度と入籍a・受験
二 新寧県客民の童試受験問題
1 乾隆二十六年—二十九年
2 乾隆三十九年—五十年
3 乾隆五十二年
4 礼部の見解
5 開平県の場合
6 小結——清朝中央・省官僚・土著民・客民
三 広府人社会の≪移住・定着ルール≫と図甲制
四 移住・開墾政策の内容と国家制度
おわりに
第六章 清代徽州休寧県における棚民像………
渋谷 裕子
はじめに
一 休寧県に棚民が流入した背景
二 棚民を追放した地域
1 龍田郷浯田嶺村
2 龍田郷江田村
三 棚民を受容した地域
1 源芳郷幸川村
2 源芳郷里芳山村
結びにかえて
第七章 生きられた「地域」………山田 賢
——丁治棠『仕隠斎渉筆』の世界——
はじめに
一 ある少女の死
二 破滅と死の影——「刧」の風景
三 士人の肖像
おわりに
第八章 スタイン第四次中央アジア踏査について………渋谷誉一郎
——民国初期における文物保護への道程——
はじめに
一 イギリス、アメリカでの準備活動(二五−三〇年)
二 外国踏査隊の活動と中国古物保管委員会の対応(二五−三〇年)
三 旅券の取得と中国各界からの反撥(三〇−三一年)
四 新疆におけるスタイン(三〇−三一年)
むすび
第九章 ≪地方≫という世界………プラセンジット・ドゥアラ(山本英史・佐藤仁史 訳)
——政治と文学に見る近代中国における郷土——
はじめに
一 日中の論議の上での郷土
二 魯迅と郷土文学
三 満州国および梁山丁の『緑色的谷』
四 『緑色的谷』の受容過程
おわりに