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SDGs先進都市フライブルク

市民主体の持続可能なまちづくり

著:中口 毅博
著:熊崎 実佳

紙版

内容紹介

環境、エネルギー、技術革新、働きがい、人権、教育、健康……フライブルクではSDGsに関わる市民・企業活動が広がっている。本書では、それらがなぜ個々の活動をこえて地域全体の持続可能性につながっているのかを探り、SDGsを実現するために自治体や企業、市民が考えるべきこと、政策や計画立案、協働・連携のヒントを示す。

目次

目次

はじめに  

序章 フライブルク市はなぜ「SDGs先進都市」と言えるのか

1 ドイツでもっとも「SDGs先進都市」に近いまち─フライブルク市
「SDGs先進都市」像は「SDGs」の語呂で表現できる/SDGsにいち早く対応/ドイツ南西部に位置するフライブルク市/ドイツ有数の活力のある学園都市/生活環境の質も高い/フライブルク市はなぜ人気の町なのか?/原発反対運動をきっかけにソーラーシティへ/市民主導のローカルアジェンダ21の推進/環境政策から持続可能な発展政策へ/ローカルコンセプトからグローバルなコンセプトへ
2 推進のための行政システム
フライブルク市議会/サステナビリティ評議会/市役所のサステナビリティ管理部門

第1章 貧困をなくそう
1・1 貧困層へのケアと省エネ改修を同時に実現─ヴァインガルテン地区
住むのが好きな人が少ない地区/住民参加による市営住宅の改修/徹底した省エネ改修/生活支援や安全性・利便性向上の工夫/隣人関係・住民の繋がりの確立/省エネとコミュニティ再生を同時に実現

第2章 飢餓をゼロに
2・1 市民の共同出資による有機農業―ガルテンコープ・フライブルク
新しい地産地消有機農業の始まり/野菜の配布方法も環境に配慮/持続可能な農業、食の安全、市民の交流と学び/イベントの例/持続可能な農業とそれを支える市民の相互作用

第3章 すべての人に健康と福祉を
3・1 自然保育で身につく主体性―ホイヴェーク森のようちえん
NPO法人が経営する森のようちえん/園舎はトレーラーハウス、園庭は森/1日の保育の様子/過度に介入せず自分で学ぶことで伸びる能力

第4章 質の高い教育をみんなに
4・1 生徒の主体性を高めるエコワットプロジェクト─シュタウディンガー総合学校
生徒が生徒に教える環境教育カリキュラム/エコワットプロジェクトによる省エネルギー/「フィフティー・フィフティー」の先駆け/自然と共生し・活かす「遊びの家」/主体性・社会性を重んじる教育スタイル
4・2 オールラウンド型の環境学習拠点―エコステーション
公園の中にある公設民営の環境学習拠点/「緑の教室」/他の団体とのネットワークが多彩なプログラムを生む/市民向けプログラムの例/自由度の高さが学校や市民の環境学習活動を後押し
4・3 多種多彩なプログラムを有する生涯学習センター─フォルクスホッホシューレ・フライブルク
民主主義のための生涯学習センター/政治から趣味まで/時代とともに変遷するプログラム/「すべての人のための教育」で人を幸せにする/60の市民団体との連携で実施されるプログラム

第5章 ジェンダー平等を実現しよう
5・1 カフェや書店でジェンダー平等活動─女性に対する暴力反対キャンペーン
書店やカフェも協力する「女性への暴力に反対する16日間」/多様なプログラム/国際的な活動とのリンク/まだまだ薄い行政や市民の関心

第6章 安全な水とトイレを世界中に
6・1 水の問題に市民の立場からアプローチ─レギオヴァッサー
硝酸塩など、目に見えにくい問題を提起/約36%の地下水が「悪い」状態/市内のドライザム川での自然再生の取り組み/「世界水の日」でボトル入り飲料に警鐘/きれいな水や美しい景観維持のための「縁の下の力持ち」

第7章 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
7・1 市民出資で太陽光や風力発電所を建設─エコシュトローム
市民共同発電所の設立を支援する民間企業/市民参加で運営し利益を出す/6基の風車を建てるために市民出資を募る/サッカーファンが出資してスタジアムの屋根にソーラーを設置/プロジェクトの進め方/市民との信頼関係が事業成立のカギ
7・2 生徒主体で太陽光発電事業会社を運営─独仏ギムナジウム
バイリンガル教育に力を注ぐ中高一貫校/ソーラー会社「スコレア」の設立/楽しく刺激的な「会社」/下級生を巻き込む「スコリニ」/エネルギーコンサルタントの支援

第8章 働きがいも経済成長も
8・1 企業との連携で行う職業教育─リヒャルト・フェーレンバッハ職業学校
開校約100年の工業学校/学校はまさに「エコパーク」/装置の制作や実験を行う生徒たち/学校とクリーンなエネルギー産業との連携
8・2 クリーンエネルギーを販売し地域経済・雇用を下支え─バーデノーヴァ
環境保護がミッション/供給電力の8割近くが再生可能エネルギー/グリーン電力と市民共同発電所/イノベーションファンド/コジェネレーションによる地域熱供給/雇用・労働面でも貢献

第9章 産業と技術革新の基盤をつくろう
9・1 最先端の太陽エネルギーシステムを開発─フラウンホーファー研究機構・ISE
ドイツ全土で約2万5000人が働く応用研究機関/技術の幅広い応用に取り組む/コンサルティング会社が派生

第10章 人や国の不平等をなくそう
10・1 グローバルな貿易による不平等の解消を目指す─ヴェルトラーデン・ゲルバーアウ
「貧しい国」の製品をフェアな価格で販売/なぜフェアトレード商品が重要か/ドイツで成長するフェアトレード市場/お店はしだいに拡大/平等な世界のために働く

第11章 住み続けられるまちづくりを
11・1 車の少ないまちづくりの中核を担う─フライブルク市交通公社(VAG)
交通公社はフライブルク市の第3セクター/車なしで中心部へ行けるまちづくり/乗り放題チケットの導入で利用者が拡大/乗り換え利便性の向上/パークアンドライドやカーシェアリングの導入/自転車専用道路や専用レーンの整備/交通計画とリンクした都市計画
11・2 住みやすさ抜群、車に依存しない街─ヴォーバン地区
若年層の多い街/市民主導で進んだヴォーバン地区の開発/「カーポートフリー区画」と「カーリデュース区画」/LRTや自転車の利用を便利に/交通量の少ない道路は子どもの創造的遊び空間/自家用車保有台数は少なく住環境満足度はトップクラス/市民が案を作る拡大市民参加
11・3 協働作業で作った環境配慮型住宅とコミュニティ─ヴォーバン地区の建築グループ
都市再生の先駆けとなったヴォーバン地区の建築グループ/市は地区の4分の1の土地を建築グループに譲渡/環境に配慮したコーポラティブ住宅「クレーハウス」/電気・熱の自給が可能なクレーハウス/クレーハウスの経済性/低炭素まちづくりに貢献/人間関係も持続可能なコーポラティブ住宅/住民ニーズに応える野心的な建築家

第12章 つくる責任つかう責任
12・1 リサイクル率60%超えを実現─フライブルク市廃棄物管理・清掃公社(ASF)
市が53%出資する第3セクター/リサイクルできないごみは有料で年間契約/ごみは4分別/資源循環の拠点、リサイクリングセンター/生ごみや草花はバイオガス化/普及啓発活動も行う/「フライブルクカップ」導入で飲料容器をリユース/ごみ排出量は20年間で約半分に減少

第13章 気候変動に具体的な対策を
13・1 歴史的建造物を保存しながら省エネに挑戦─ヴィーレ地区
歴史的町並みのあるヴィーレ地区/困難な歴史的価値の保存と省エネの両立/コジェネレーションによるエネルギー高効率化の挑戦/光熱費を3割削減/エネルギーの消費者から生産者へ/建築物保存と省エネの同時解決でSDGsの考え方を体現

第14章 海の豊かさを守ろう
14・1 魚類保全のため、菜食の寿司を提供する─魚のない寿司
魚の消費はなぜ減らすべきか/高まるベジタリアン、ヴィーガン向けの寿司需要/植物性原料だけで十分おいしく、エシカルに/河川から海へのごみ流出を止める/陸地でも十分にできる海洋保全

第15章 陸の豊かさも守ろう
15・1 森の大切さや経済的価値を学ぶ拠点施設―ヴァルトハウス
森や林業に関する公設民営の学習拠点施設/カフェを備えたメイン建物と作業のためのログハウス/「本物」に触れて実用的なものを作る学習プログラム/
1週間プログラムで子どもたちは劇的に変わる/ボートを製作して池に浮かべて乗る/経済価値を生みだすことも学ぶ

第16章 平和と公正をすべての人に
16・1 ローカルな戦略でグローバルな武器貿易に反対─兵器情報センター・リプ
市民の手による軍事産業資料室/ドイツ企業の武器輸出を告発/ドイツ縦断アクション/株主として企業の責任を追及する/精力的なネットワークづくり/生徒が自主的に平和デモを実施/日本への警鐘

第17章 パートナーシップで目標を達成しよう
17・1 エコステーションと連携し生徒主体の環境活動を実践─ヴェンツィンガー実科学校
エコステーションに隣接する実科学校/ソーラークラブ「ヴェンツゾーラー」とのパートナーシップ/エネルギー委員会/自由な教育スタイルが多様なパートナーシップを成立させる
17・2 多様な市民団体の連携でSDGs達成を目指す─アイネ・ヴェルト・フォーラム
ローカルアジェンダ21の流れを受けたネットワーク型組織/人権・平等から食・農まで/州のSDGsキャンペーンで「飢餓と食糧」を担当/多様な協働、SDGs推進のハブとして

終章 「SDGs先進都市」を目指して
1 「SDGs先進都市」の成立要因
高い市民の環境意識と活動への参加意欲/エネルギー関連産業の集積/コンサルタントや非営利団体の活動の活発化/市民活動を支える学習拠点の充実/学校や教員の自由裁量の大きさ/公益性の高い活動を行って当然という市民風土/大学入学前の若者がボランティア活動を実施/計画段階からの市民参加と時宜にあった市民の取り組み/議会と市民参画で成り立っている持続可能性管理システム
2 日本における持続可能な地域づくりの課題
「実質的な市民参加」は、ほとんど実現していない/真の地方自治も、まだ実現していない
3 「SDGs先進都市」に向けての日本流の取り組みのアイデア
S:市民主体の取り組み/D:同時解決の取り組み/G:世代を超えた目標(ゴール)に基づく取り組み/s:世界と繋がった取り組み

フライブルクのSDGs関連年表
注記一覧
おわりに

著者略歴

著:中口 毅博
静岡県三島市生まれ、筑波大学比較文化学類卒業、博士(学術)
芝浦工業大学環境システム学科教授、(特非)環境自治体会議環境政策研究所所長。
自治体の環境政策を専門とし、地域創生やSDGsに関わる教育・啓発活動を自ら実践する。主な編著書に『環境自治体白書』(生活社、毎年発行)『環境マネジメントとまちづくり―参加とコミュニティガバナンス』(学芸出版社、2004年)『環境自治体づくりの戦略―環境マネジメントの理論と実践―』(ぎょうせい、2002年)など。
著:熊崎 実佳
東京都昭島市出身。2010年よりフライブルク市在住。通訳兼フリーライター。
環境保護や反原発運動などに関わっており、市民団体と広いネットワークを持つ。エネルギーコンサルティングを行うドイツ人の夫と、二人の子どもと暮らす。

ISBN:9784761527136
出版社:学芸出版社
判型:A5
ページ数:220ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2019年09月
発売日:2019年08月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB