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近年，地球環境や温暖化への世間の関心が高まるにつれ，これらへの影響を緩和するために，高選択性の分子触媒を開発しようとする動きが高まっている．これまでに知られている触媒の中で最も高選択的に反応を行わせることができる分子触媒は，生体触媒である酵素である．酵素では有機物であるタンパク質により，活性中心に近づくことができる反応基質の選択や，反応基質の配向が精密に制御されている．この酵素の活性中心を人工的な分子触媒へと置換することで，天然の酵素を凌駕するより高活性かつ高選択的な触媒を生み出そうとする試みがなされている．
本書では，主にエネルギーに関連する分子触媒に関して，その機能統合化の観点から現状と課題をまとめ，今後を展望する．

巻頭カラー　写真で見る分子触媒の世界

PartⅠ　基礎概念と研究現場
1章 Interview ：フロントランナーに聞く（座談会）
林　高史（大阪大学），山田 裕介（大阪市立大学），上野 隆史（東京工業大学），
石谷　治（東京工業大学），聞き手：南後　守（大阪市立大学）

2章
Basic concept-1：酵素活性中心の改変による高活性人工酵素
林　 高史（大阪大学大学院工学研究科）
Basic concept-2：統合型分子触媒の理論的解説
山田 裕介（大阪市立大学大学院工学研究科）
Basic concept-3：光合成膜タンパク質複合体の構造と触媒機能
菅　倫寛・沈　建仁（岡山大学異分野基礎科学研究所）
Basic concept-4：タンパク質結晶を利用した分子・ナノ粒子触媒
上野 隆史（東京工業大学生命理工学院大学院生命理工学研究科）

3章 Present and Future：光エネルギー変換にかかわる分子触媒に関する研究の歴史と将来展望
福住 俊一 （名城大学大学院理工学研究科）

PartⅡ　研究最前線
1章 光合成タンパク質PSIIの構造解析と機能
川上 　恵典（大阪市立大学複合先端研究機構）
2章　酸素発生のための統合型分子触媒系の構築
近藤 　美欧・正岡 重行（分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域）
3章　人工金属酵素によるエネルギー創製
小野田　晃（大阪大学大学院工学研究科）
4章　蛋白質結晶を利用した統合型分子触媒
田部　博康（大阪市立大学大学院工学研究科）
5章　統合型分子・ナノ粒子触媒によるエネルギー創製
山田 　裕介（大阪市立大学大学院工学研究科）
6章　レドックスメディエータを用いた統合型光触媒
阿部　竜（京都大学大学院工学研究科）
7章　酵素と分子の統合によるエネルギー創製
天尾　豊（大阪市立大学複合先端研究機構）
8章　金属有機構造体を利用した統合型光エネルギー変換触媒
松岡 　雅也・，堀内　悠(大阪府立大学大学院工学研究科)
9章　異種金属錯体の連結による光エネルギー変換
酒井　健(九州大学大学院理学研究院)
10章　シングルサイト光触媒を利用したエネルギー変換技術
山下 　弘巳(大阪大学大学院工学研究科)
11章　統合型分子触媒を利用したCO2還元触媒
石谷　治(東京工業大学理学院化学系)
12章　CO2還元を行う分子触媒
石田　斉（北里大学大学院理学研究科）
13章　エネルギー変換反応で利用される金属錯体光増感剤
小林　厚志・加藤 　昌子(北海道大学理学院化学部門)
14章　ビタミンB12分子をはじめとするCo錯体を利用した水素発生触媒
嶌越　恒 (九州大学大学院工学研究院)
15章　可視光を利用したCO2還元による蟻酸生成
森川 健志（株式会社豊田中央研究所森川特別研究室）
16章　エネルギー変換機能を持つ酵素の工業利用
小池田　聡（天野エンザイム株式会社岐阜研究所）

PartⅢ　役に立つ情報・データ
1．この分野を発展させた革新論文
2．覚えておきたい関連最重要用語
3．関連有用情報