浮世絵の華やかな世界の背後には、絵師の筆致を機に刻み、色を摺り重ねた無数の職人たちの手がありました。絵師が表舞台の主役だとすれば、彫師と摺師はその舞台を支える名脇役と言えるでしょう。
「絵師の名は作品とともに語り継がれる一方で、職人たちの姿は歴史の陰に埋もれてしまう」
著者である石井研堂は、『錦絵の彫と摺』において、そうした彫師・摺師の精緻な技を、記録として後世に遺すことを己の使命としました。本書は、職人たちの存在とその手業に注目し、浮世絵制作の全貌を道具・工程・技術の面から可能な限り記録した、錦絵研究の精華です。
専門家のみならず、初心者の方にもその魅力を味わっていただけるよう、口絵には現代の摺師が手がけた「版画工程見本」を付しました。江戸の風雅を今に伝える和装本の佇まいとともに、受け継がれる伝統の技にぜひ触れてみてください。