出版書誌データベース

日本から韓国へと移住した人々のライフストーリーをふまえ、動機や生活実態、日本出身者コミュニティの特徴、移住を促した歴史的背景を多角的に分析。日韓を地続きのように捉え、機会や都合に応じていつでも「行き来（ワッタカッタ）」する新しい生き方にも着目。

　はじめに

序章
　第1節　日本から韓国へのライフスタイル移住
　第2節　ライフスタイル移住に関する先行研究
　　2.1　ライフスタイル移住とは何か
　　2.2　ライフスタイル移住の動機――プッシュ要因とプル要因
　　2.3　移住後の期待と現実のずれの調整、アイデンティティの変容
　　2.4　従来型とは異なる移住先での日本人同士のつながり
　　2.5　東アジア諸国間の移動に関する参照軸
　第3節　調査地および調査対象者の概要
　　3.1　調査地概要――弘大・新村・梨大
　　3.2　調査概要――調査協力者プロフィール
　第4節　本書の目的と構成

第1章　在韓日本出身者の歴史
　第1節　世界に広がる日本人移民の中の在韓日本人
　　1.1　日本から「外国」への移動
　　1.2　日本から外地（朝鮮）への移動
　第2節　京城に住む日本人たち
　第3節　朝鮮を訪れる日本人
　　3.1　広報物に謳われる「韓国らしさ」
　　3.2　観光客の視点
　第4節　国交正常化後のノンフィクション作品と語りから見る韓国生活
　　4.1　文献の概要
　　4.2　韓国人へのまなざしの変化
　　4.3　日本出身者の価値観はどう変化したのか
　第5節　在韓在日コリアン
　　5.1　在日コリアンとは――オールドカマーとニューカマー
　　5.2　母国とつながる在日コリアン――在韓在日コリアン
　　5.3　在韓在日コリアンのグラデーション
　第6節　小括

第2章　韓国へのライフスタイル移住を促した背景
　第1節　失われた30年とライフスタイル移住ブーム
　　1.1　失われた30年と日韓関係
　　1.2　バブル崩壊と海外旅行の変容
　第2節　日本出身者を引き寄せた「日流」ブーム
　　2.1　韓国における「Nippon Feel」までの道のり――前史
　　2.2　「Nippon Feel」のきっかけ
　　2.3　日韓パートナーシップ宣言と日本大衆文化開放
　第3節　日韓の移動の簡素化
　　3.1　LCCの普及
　　3.2　留学手続きの簡素化
　第4節　小括

第3章　統計から見る在韓日本人
　第1節　統計から見る韓国全体の在韓日本人
　　1.1　全国的な人口動態
　　1.2　ビザ別に見る在韓日本人の職業構成
　　1.3　地方自治体別の日本人居住者と婚姻
　第2節　統計から見るソウルの日本人
　　2.1　ソウルの日本人人口動態と特徴
　　2.2　東部二村洞――変化するコミュニティ
　　2.3　「弘大・新村・梨大」地区――日本人の「密集地帯」
　　2.4　ソウルの日本人コミュニティにおける脱領域化とコミュニティの棲み分け
　第3節　多文化社会の中の日本人
　第4節　小括

第4章　ライフストーリーから見るライフスタイル移住の動機
　第1節　人生のリセットとしてのライフスタイル移住
　　1.1　韓国への留学動機に見られる仕事や職場への不満、就職難
　　1.2　韓国での就職を導いた偶然の出会い
　第2節　韓国に対するイメージと移住の動機
　　2.1　幼少期・思春期における具体的な韓国との関わり
　　2.2　韓流による影響の大きさとなお残る否定的なイメージ
　第3節　苦労を乗り越えて韓国へ
　　3.1　留学までのプロセスに見られる苦労
　　3.2　街（ドンネ）を選択するプロセス
　　3.3　「まなざし」は変化したのか
　第4節　母国留学の経験
　　4.1　母国留学とは
　　4.2　母国留学に関する語り
　第5節　小括

第5章　ライフスタイルの転換の難しさと適度な交流のありかた
　第1節　留学生の日常
　　1.1　ソウルの日本人留学生の動態
　　1.2　語学堂生
　　1.3　ワーキングホリデー
　　1.4　学部生・大学院生
　　1.5　高校留学
　　1.6　留学生の住む空間
　第2節　現地で働く人の日常
　　2.1　職場での韓国語使用
　　2.2　韓国の大らかな職場環境に対する評価
　　2.3　仕事中心の生き方の継続
　第3節　日韓夫婦の日本出身者の日常
　　3.1　男性の在韓日本出身者による仕事中心の生活
　　3.2　子どもとの関わりと家庭内の言語使用
　　3.3　家庭内の食事
　　3.4　交友関係
　第4節　コミュニティの脱領域化？――日本人とのつながり方
　　4.1　日本人とはあえて会わないと語る人々
　　4.2　日本人としか会わない？
　第5節　SNSでつながる空間
　第6節　小括

第6章　日韓を「ワッタカッタ」する「地続き化したライフスタイル移住」
　第1節　韓国は生きやすい社会なのか？
　　1.1　日本と異なる制度
　　1.2　日本と異なる習慣
　第2節　これからも韓国を拠点とする人たち
　　2.1　「いれる限りいたい」と永住権
　　2.2　韓国で余裕あるライフスタイルを過ごす
　　2.3　コンプレックスの中の選択
　　2.4　非日常が日常へ
　第3節　彼／彼女らの韓国を去った理由
　　3.1　韓国での生きづらさ
　　3.2　帰国と移動の曖昧化、第三国へのライフスタイル移住
　第4節　いつでも「ワッタカッタ」できる――「地続き化したライフスタイル移住」？

終章
　　1.1　総括
　　1.2　ライフスタイル移住研究における国境を跨いだ「近距離ライフスタイル移住」
　　1.3　今後の課題

　あとがき
　初出一覧
　参考文献
　索引

著：今里　基
1989年福岡市生まれ
福岡大学法学部卒業後、東西大学校（韓国）大学院日本地域研究科修士課程修了
立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了
博士（学術）
大阪公立大学ほか非常勤講師、2025年より立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員
〔主な論文〕
「『帰属するエスニシティを徹底化しない戦術』の考察――日本在住韓国系ニューカマー第二世代の事例から」『立命館人間科学研究』38号、15-29頁、2019年
「ライフスタイル移住の限界――日本へ戻る日本出身者たち」『인문사회과학연구（人文社会科学研究）』24巻1号、497-522頁、2023年
「在韓日本出身者の韓流前の韓国生活――ノンフィクション作品を中心に」『多民族社会における宗教と文化：共同研究』26号、19-27頁、2023年