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社会的企業の日韓比較

政策・ネットワーク・キャリア形成

編著:米澤 旦
編著:福井 康貴

紙版

内容紹介

日本と韓国の社会的企業に注目し、2019年から開始された「日韓社会的企業のエコシステム調査」の調査結果を主として用い、新しい社会問題の解決の担い手が両国でいかに形成され、どのような環境のなかで活動・経営・経験されているかを明らかにする。

目次

 はじめに

序章 「社会的企業の日韓比較」が目指すもの──主題・方法・構成[米澤旦]
 1.問題の所在
 2.本研究の方法・本書の構成
  2-1.本書の方法
  2-2.本書の構成

第1章 「社会的企業の日韓比較」の研究的位置づけ──三つの先行研究群との関連で[米澤旦]
 1.三つの先行研究群における本研究の位置づけ
 2.社会的企業研究の国際比較の発展
  2-1.定義をめぐる論争
  2-2.社会的企業の制度化の把握へ
 3.生活保障の担い手としての社会的企業
  3-1.福祉国家と社会的企業
  3-2.東アジアの福祉国家と社会的企業
 4.経済社会学・組織社会学と本研究──二つの水準の埋め込みの区別
  4-1.「政治的埋め込み」と社会的企業
  4-2.「構造的埋め込み」と社会的企業
 5.小括

第2章 社会的企業政策の日韓比較──制度化の展開とその文脈[金成垣・米澤旦]
 1.はじめに
 2.韓国の社会的企業政策の展開
  2-1.社会的企業育成法の制定
  2-2.保守政権における社会的企業の展開
  2-3.保守政権から進歩政権へ、そしてふたたび政権交代へ
 3.日本の社会的企業政策の展開
  3-1.2000年から2009年まで(自民党政権期)
  3-2.2009年~2012年(民主党政権期)
  3-3.2012年度以降(自民党政権期)
  3-4.小括
 4.社会的企業政策の展開と社会的文脈との関係
  4-1.社会的企業政策の共通点と相違点
  4-2.社会保障制度の成熟度と社会的企業への期待
  4-3.労働市場における自営業の位置づけと起業のしやすさ
 5.結論──雇用の場としての社会的企業/アイデアの実験場としての社会的起業

第3章 社会的企業の社会関係資本と制度ロジックの日韓比較[福井康貴]
 1.問題の所在
 2.理論枠組みと日韓の制度的環境
  2-1.社会関係資本と制度ロジック
  2-2.日韓の制度的環境の違い
 3.データと変数
 4.社会関係資本と制度ロジックの比較
  4-1.記述的分析
  4-2.多変量解析
 5.結論

第4章 「社会起業家になる」ことの日韓での違い──起業プロセス、支援、事業の方向性の違いに着目して[井口尚樹]
 1.はじめに
 2.社会起業家の特徴や経験、正当化の文化的資源の先行研究
 3.方法
 4.結果
  4-1.受けた支援の内容
  4-2.支援者と起業家の間のギャップ
  4-3.事業の変遷と今後の目標
 5.結論

第5章 社会起業家の社会関係資本──リソース・ジェネレータによる接近[福井康貴]
 1.問題の所在
 2.先行研究
  2-1.社会起業家における社会ネットワークの重要性
  2-2.社会関係資本の経験的把握
 3.データと変数
 4.社会関係資本の分析
  4-1.どのくらい相談しているのか─全体的なサイズの検討
  4-2.誰に何を相談しているのか(1)──相談先別の社会関係資本サイズ
  4-3.誰に何を相談しているのか(2)──相談先別・資源別順位の検討
 5.結論

第6章 社会的企業の従業員のキャリア──日本の若年大卒従業員の入職過程と動機のハイブリッド性[井口尚樹]
 1.はじめに
 2.社会的企業で働く従業員に関する先行研究
  2-1.社会的企業の従業員の特徴や満足の要因に関する先行研究
  2-2.日本の非営利セクターの有給職員に関する先行研究
 3.方法
 4.結果
  4-1.従業員が入職に至るまでの経緯
  4-2.現在の仕事への評価
  4-3.将来のキャリアの展望
 5.結論

第7章 韓国における社会起業家の資源動員による制度的起業家活動──事例および実証分析[金榮春(訳:崔仙姫)]
 1.はじめに
 2.社会的企業が登場する背景
 3.理論的視点:制度的起業家活動(Institutional Entrepreneurship)
  3-1.ハイブリッド性と利害関係者の組織化
  3-2.社会的企業の生態系形成
 4.社会的企業および社会起業家に対する実証分析
  4-1.サンプルの特性
  4-2.社会起業家の資源動員における社会領域別分布──記述統計
  4-3.社会起業家の社会領域別資源動員に関する重回帰分析
 5.結論

第8章 韓国の社会的企業政治──政治化された社会的企業の光と影[金成垣・李彩雲]
 1.韓国における社会的企業の展開をどうみるか
  1-1.社会的企業への関心の高まり
  1-2.政治化された社会的企業
  1-3.韓国の福祉政治と「社会的企業政治」
 2.社会的企業政治の展開
  2-1.進歩から保守への政権交代と自治体による社会的企業の活性化
  2-2.保守政権の持続と社会的経済基本法案をめぐる政治攻防
  2-3.保守から進歩への政権交代と革新的政策構想の登場
  2-4.進歩から保守への政権交代と社会的企業政策の方向転換
 3.韓国の社会的企業政治が示すもの
  3-1.政治化された社会的企業の「光」と「影」
  3-2.政治化された社会的企業の「光」と「影」の境界線にあるもの
  3-3.今後に向けて

第9章 韓国の社会的企業の類型とエコシステムの整理[崔仙姫・米澤旦]
 1.社会的企業のエコシステムとは何か
 2.韓国の社会的企業の類型
  2-1.韓国の社会的企業の類型と統計
 3.韓国の社会的企業のエコシステム
  3-1.韓国の社会的企業の中間支援団体の事例
  3-2.韓国の社会的企業が利用できる公的支援、金融
  3-3.韓国の社会起業家・スタッフへの教育
 4.結論

終章 アジアにおける社会的企業の比較社会学の可能性[福井康貴]
 1. 社会的企業の日韓比較
 2. 社会的企業というアイデア
 3. 社会的企業の社会ネットワーク
 4. 社会起業家やスタッフの意味世界
 5. 埋め込み、制度、アイデア
 6. 社会的企業から迫るアジアの社会と経済

 索引
 編著者・執筆者紹介

著者略歴

編著:米澤 旦
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。明治学院大学社会学部専任講師、同准教授を経て、現在、明治学院大学社会学部教授。専門は、サードセクター論、福祉社会学、社会政策論。主な著書に『労働統合型社会的企業の可能性――障害者就労における社会的包摂へのアプローチ』(ミネルヴァ書房、2011年)『社会的企業への新しい見方――社会政策のなかのサードセクター』(ミネルヴァ書房、2017年)、『福祉社会学のフロンティア――福祉国家・社会政策・ケアをめぐる想像力』(編著、ミネルヴァ書房、2021年)など。
編著:福井 康貴
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学高齢社会総合研究機構特任助教を経て、現在名古屋大学大学院環境学研究科准教授。専門は、経済社会学、社会階層論。主な著書・論文等に、『歴史のなかの大卒労働市場――就職・採用の経済社会学』(勁草書房、2016年)、「なぜ就活をしないといけないのか」「転職・独立という選択」池田心豪・西村純子編『社会学で考えるライフ&キャリア』(中央経済社、2023年)、「65歳までの継続雇用体制と雇用ポートフォリオ」労働政策研究・研修機構・森山智彦編『70歳就業時代における高年齢者雇用』(労働政策研究・研修機構、2021年)など。

ISBN:9784750356983
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:296ページ
価格:4500円(本体)
発行年月日:2024年01月
発売日:2024年01月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KJ