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MINERVA 人文・社会科学叢書

権威主義体制にとって選挙とは何か 254

独裁者のジレンマと試行錯誤

編:山田 紀彦

紙版

内容紹介

現在世界の大半を占める権威主義国において、選挙はいかなる役割を担っているのか。従来「体制維持」を目的に行われると考えられるのが一般的だったが、本書は七カ国の事例分析を通してそこにより多様な意図があること、しかもその意図が容易には達成されず、選挙結果をコントロールしようと独裁者たちが試行錯誤を繰り返していることを印象的に描き出す。不明な点が多い権威主義国の統治メカニズムを明らかにする画期的研究。

目次

序 章 独裁者は選挙で何を目指すのか?――権威主義体制下の地方議会選挙 (山田紀彦)

第1章 準強制参加の「祭り」としての選挙 ――ベトナムにおける地方議会選挙 (石塚二葉)
 1 人民評議会制度の概要と選挙制度の変遷
 2 2021年人民評議会議員選挙
 3 候補者確定と選挙結果
 4 地方議会選挙の政治的意義

第2章 体制のコントロールと多様な選挙機能 ――ラオスにおける県人民議会選挙 (山田紀彦)
 1 大きく変わる県議会の位置づけ
 2 地方議会の復活と選挙での党の狙い
 3 体制維持に資する多様な選挙機能

第3章 党の徹底したコントロールと疲弊する現場 ――中国における地方人民代表大会直接選挙(中岡まり)
 1 設計された「議会」――人民代表大会制度の特徴
 2 共産党の指導下におかれる「議会」
 3 選挙工作過程で奔走する地方組織
 4 「成功」した選挙の弊害

第4章 体制維持に資する選挙機能の多様性とその限界 ――人民党支配下のカンボジアにおけるコミューン評議会選挙 (山田裕史)
 1 なぜ人民党はコミューン評議会選挙を導入したのか?
 2 2013年総選挙がもたらした体制危機
 3 選挙の意図せぬ機能と選挙後の操作

第5章 脱「統一ロシア」の試みとその限界 ――プーチン期のロシアにおける地方議会選挙(油本真理)
 1 地方議会選挙をめぐる統制と競争――連邦レベルの枠組み法
 2 地方レベルにおける選挙制度と選挙の動向
 3 脱「統一ロシア」の実態―― 2019年モスクワ市議会選挙を例に

第6章 支配深化のための州議会選挙 ――モザンビークにおける与野党対立と独裁者のジレンマ (網中昭世)
 1 地方支配のための制度設計
 2 正当性をめぐる与野党の攻防
 3 一党優位の確立と独裁者のジレンマ
 4 支配深化への道のり

第7章 情報の収集とパトロン・クライアント関係 ――アゼルバイジャンにおける基礎自治体選挙(立花 優)
 1 YAP体制の確立と地方統治
 2 コミュニティに限定された新たな地方自治制度
 3 低投票率選挙に期待される情報収集機能――バラディーヤ選挙
 4 バラディーヤと地方におけるミクロなパトロン・クライアント関係

終 章 試行錯誤する独裁者(山田紀彦) 

あとがき
索  引

著者略歴

編:山田 紀彦
2024年2月現在
アジア経済研究所地域研究センター動向分析研究グループ長

ISBN:9784623097005
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:274ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2024年02月
発売日:2024年02月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPH