シリーズ・中東政治研究の最前線 4
エジプト
監:中村 覚
編:横田 貴之
内容紹介
日本における中東政治研究の最新の知見をあつめたシリーズの第4巻。政治学と地域研究を組み合わせ、中東地域の構造的変動を解明することを目指す本シリーズは、今後の中東地域内力学および国際関係を見通す視座も提供する。本巻では、現代中東で政治・経済・文化・宗教において多大な影響力を有する地域大国エジプトを取り上げる。日本との関係や「アラブの春」以降の動向を踏まえつつ、幅広いトピックを網羅する。
目次
巻頭言 「関わりのある他者」中東に関する地域研究と政治学の協調と融合へ
序 章 専門性と包括性が融合するエジプト研究を目指して(横田貴之)
1 なぜ「現代エジプト」を論じるのか
2 本書の特色
3 本書の構成
第1章 日本・エジプト関係──第二次世界大戦以降を中心に(横田貴之)
1 先行研究と問題の所在
2 第二次世界大戦前の日本・エジプト関係
3 外交関係
4 政府開発援助(ODA)
5 経済・文化関係の発展
6 日本・エジプト関係の重要性
第2章 マイノリティ問題──リベラリズムとネオ・ミッレト制のはざまで(三代川寛子)
1 マイノリティ問題のはじまり
2 マイノリティ問題に関する国際規範
3 エジプトにおけるマイノリティ集団
4 エジプトにおけるコプト問題
5 マイノリティ問題の再来と人権活動の展開
6 スィースィー政権下のコプト問題と今後の展望
第3章 社会運動──意識調査にみる「1月25日革命」の行方(岩崎えり奈)
1 社会運動としての「1月25日革命」
2 社会運動研究
3 世論調査・意識調査
4 「エジプト意識調査」にみる「1月25日革命」前後の意識の変化
5 2014年時点での政治意識
第4章 政軍関係──兵営国家エジプトの変容(鈴木恵美)
1 表舞台に登場した国軍
2 兵営国家の定義と研究史の概要
3 兵営国家の構築とその制度化
4 拡大する国軍の経済活動
5 2つの「革命」にみる国軍の利権維持
6 弾力性ある兵営国家の今後
第5章 政治体制──政党政治の展開と「民主主義」的統治の名目的・公式的側面の変遷(今井真士)
1 エジプトの政党政治を比較の俎上へ
2 政党政治の展開──ムハンマド・アリー朝から第三共和政まで
3 公式制度の設計と運用の変遷
第6章 域内外交──全方位均衡論によるエジプト歴代政権の政策分析(横田貴之・金谷美紗)
1 エジプト外交研究における学術的課題
2 全方位均衡論とエジプト共和制
3 ナセル政権の域内外交
4 サーダート政権の域内外交
5 ムバーラク政権の域内外交
6 「アラブの春」からムルスィー政権までの域内外交
7 スィースィー政権の域内外交
8 国内外の脅威均衡と権威主義体制の存続
第7章 エジプトと域外大国──域外・域内外交の相関関係(小野沢 透)
1 動の外交と静の外交
2 革命政権の彷徨
3 米国との同盟の時代
4 同盟のゆらぎ
5 エジプト外交の変数──結論
第8章 過激派──テロに対峙する政権と軍・警察(西野正巳)
1 イスラーム主義過激派とテロ対策
2 イスラーム主義過激派の源流と展開
3 2011年の「アラブの春」以降
4 テロ対策
5 経緯と現状
第9章 政治と経済──政府と企業家の関係(土屋一樹)
1 企業家の出現
2 エジプト経済の発展
3 民営化政策の展開──1990年代の政府と企業
4 政治とビジネスの融合──2000年代の政府と企業
5 政府と企業家の関係の変化
終 章 現代エジプト研究の「最前線」(横田貴之)
あとがき
索 引