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映画学叢書

映画とジェンダー/エスニシティ

監:加藤 幹郎
編:塚田 幸光

紙版

内容紹介

ジェンダーとエスニシティの交差に、映画が隠蔽/開示(イン/アウト)する欲望とは何か。
スクリーンに表象されるその複雑さに対し、9つの視座からアプローチする。

本書では、映画が映し出すジェンダーとエスニシティの交差を軸に、映画が隠蔽/開示する欲望を考察する。トルコ系ドイツ人移民、インド系英国人女性、アラブ系アメリカ人男性。或いは「日本」というエスニシティ。グローバルな世界の中で、その複雑さは、如何に表象されるのか。そして、そこには如何なる意味が付与され、どのようなメッセージを見出すことができるのか。9つの視座からその困難にアプローチする。

目次

『映画学叢書』創刊にあたって(加藤幹郎)

はしがき


 第Ⅰ部 外国映画×ジェンダー/エスニシティ

第1章 姫と魔女のエコロジー──ディズニーとおとぎ話の論理(清水知子)
 1 白雪姫の呪文を解く
 2 グリムとディズニー──母の不在と分裂する女の身体
 3 姫の身体、魔女の身体──声とまなざし
 4 「ワイルド・センチメント」の世界へ
 5 清潔の修辞学──姫は歌い、小人は踊る
 6 「野生」のファンタジーとその論理

第2章 『レオン』におけるアイデンティティの変容・転換──〈子ども〉の抑圧とその回帰(小原文衛)
 1 『レオン』という〈記憶〉
 2 アクション映画のパラダイム──準拠と逸脱
 3 差異のシステムの攪乱──『レオン』と『グロリア』
 4 三つの『レオン』と〈抑圧されたものの回帰〉
 5 〈彼方〉の磁力

第3章 ハイブリッド・エスニシティ──エドワード・ズウィック『マーシャル・ロー』と文化翻訳(カルチュラル・トランスレーション)の可能性(塚田幸光)
 1 二つの9・11──『11’09”01/セプテンバー11』
 2 井戸と煙突──アフガン難民キャンプの政治学
 3 アラー・イン・ブルックリン──内なる他者(アウトサイダー・インサイド)としてのアラブ
 4 反転する暴力──クロスカッティングとエスニシティ
 5 ハイブリッドな主体──文化翻訳(カルチュラル・トランスレーション)の可能性

第4章 『因果応報』と『きずもの』における「民族自滅」とその背景(吉村いづみ)
 1 いかがわしきもの、それは映画
 2 シネマトグラフ・アクトへの道のり
 3 内容の規制へ──BBFCの成立
 4 BBFCの方針と公衆道徳国民協議会報告書
 5 民族自滅と性病映画

第5章 ドイツ=トルコ映画における女性像の変遷(山本佳樹)
 1 ドイツ=トルコ映画とは何か
 2 越境の物語──『冬の花』と『太陽に恋して』
 3 フェミニズム的オリエンタリズム──『シリンの結婚』
 4 二重の犠牲者──『40平米のドイツ』
 5 昼はドイツ、夜はトルコ──『ヤスミン』
 6 変身の戦略──『愛より強く』
 7 男性も苦悩する──『よそ者の女』
 8 語り部としての移民三世の女性──『おじいちゃんの里帰り』
 9 頭の片隅のアナトリア──『ピリ辛ソースのハンスをひとつ』


 第Ⅱ部 日本映画×ジェンダー/エスニシティ

第6章 日本人・李香蘭帰る──『わが生涯のかがやける日』を結ぶ山口淑子の振幅(羽鳥隆英)
 1 問題の所在──先行言説を読む
 2 李香蘭の倒錯
 3 日本人・李香蘭帰る
 4 『わが生涯のかがやける日』① 善悪の闘争
 5 『わが生涯のかがやける日』② 悲哀の解消
 6 『わが生涯のかがやける日』③ 振幅の変奏

第7章 女が映画を作るとき──浜野佐知の終わりなき再生産労働(キンバリー・イクラベルジー[翻訳・鈴木 繁])
 1 ピンク映画監督・浜野佐知の価値
 2 戦後日本における映画労働の性別分業
 3 浜野の「再生産」という戦略
 4 視覚制度(ヴィジュアル・レジーム)に対する挑発
 5 いまだ見られることなく──浜野の自伝的な苦情
 6 終わりなき「再生産」

第8章 『カルメン』二部作におけるリリィ・カルメンのサヴァイヴァル(久保 豊)
 1 クリエイティヴィティの起爆剤──木下と高峰の出会い
 2 『カルメン』二部作における西洋性と芸術性の剥奪
 3 詩と夢が織りなすコミュニティ?──色彩・音楽・演技・受容
 4 クィア的受容とキャンプ趣味
 5 彼方へ向かう列車に乗って──芸術性が支える「サヴァイヴァル」

第9章 占領期の田中絹代と小津安二郎──なぜ女は「制裁」されるのか(紙屋牧子)
 1 小津映画における暴力のシーンについて
 2 「制裁」を受ける女たち
 3 貞操をめぐる受難と救い/赦し
 4 女たちが受ける「罰」──敗戦国「日本」の表象
 5 男たちの「罪」──何が暴力を発動させるのか


初出一覧
映画用語集
人名索引/映画タイトル索引
監修者・執筆者紹介

著者略歴

監:加藤 幹郎
映画批評家・映画学者
2020年9月26日没
編:塚田 幸光
*2019年4月現在
関西学院大学法学部・大学院言語コミュニケーション文化研究科教授

ISBN:9784623081516
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:332ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2019年04月
発売日:2019年04月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATF