出版書誌データベース

ベルリンの壁が崩れ、東欧共産圏が崩壊した1989年以降、中東欧諸国では「ショック療法」と呼ばれる急激な自由化・規制緩和・民営化が進んだ。中東欧の経済・社会の変化は西欧をも変容させ、結果としてヨーロッパは「勝ち組」と「負け組」に二極化した。
2008年のリーマンショックの際、財政危機に陥ったギリシャなどの南欧諸国に、EUは再びこうした新自由主義的改革を強いた。だがこれは失敗し、改革への反発は右翼ポピュリズムの台頭につながっていく。
にもかかわらず、新自由主義路線はどの国でも堅持された。しかしブレクジットとコロナ禍を経て、ウクライナ戦争に直面するヨーロッパで、新自由主義時代はすでに終焉しつつあると、著者は論じる。
本書は2014年の刊行以来、英訳をはじめ、台湾、フィンランド、韓国、ポーランド、チェコ、ウクライナで翻訳された。日本語版は最近の情勢を踏まえ独自の加筆を施し、改訂新版ともいうべき内容になっている。

第1章　イントロダクション
第2章　1980年代の危機と改革論
第3章　1989-91年の諸革命
第4章　新自由主義の実態とその副作用
第5章　新自由主義の第二の波とＥＵの役割
第6章　中東欧の首都の比較
第7章　2008-09年の危機とその対応
第8章　新たな東欧としての南欧
第9章　共鳴しあう転換
第10章　活かされたチャンス、活かされなかったチャンス
日本語版のための補遺

謝辞
訳者あとがき
原注
図版クレジット
参考文献
人名索引
地名索引

原案：フィリップ・テーア
（Philipp Ther）
1967年生まれの歴史家。専門は中東欧近現代史。1997年にベルリン自由大学で博士号を取得。フランクフルト・アン・デア・オーデルのヴィアドリーナ欧州大学やフィレンツェの欧州大学院などを経て、2010年よりウィーン大学教授。著書に『国民国家の暗い側面――近代ヨーロッパにおける「民族浄化」』（2011年）、『アウトサイダー――近代ヨーロッパにおける避難、避難民（難民）および統合』（2017年）、『もう一つの歴史の終わり――大転換について』（2019年）ほか。ライプツィヒ書籍見本市のノンフィクション部門賞（2015年）やオーストリアのヴィトゲンシュタイン賞（2019年）など多くの受賞歴がある。2020年にはウィーンで転換史研究センター（RECET）を設立し、同センター長を務める。
＊ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

監：福田宏
（ふくだ・ひろし）
1971年和歌山県新宮市生まれ。成城大学法学部教授。専門はチェコとスロヴァキアの近現代史、国際関係論。編著　『「みえない関係性」をみせる（グローバル関係学 5）』（後藤絵美との共編、岩波書店、2020年）ほか。論文　「東欧のロック音楽と民主主義」（中野聡・木畑洋一編『冷戦と脱植民地化II――20世紀後半（岩波講座 世界歴史 23）』（岩波書店、2023年）、ほか。本書では監訳以外に第1、5、10章、日本語版のための補遺、謝辞の翻訳を担当した。
＊ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

監：河合信晴
（かわい・のぶはる）
1976年静岡県浜松市生まれ。広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。専門はドイツ現代史（東ドイツ研究）。著書　『政治がつむぎだす日常――東ドイツの余暇と「ふつうの人びと」』（現代書館、2015年）、『物語　東ドイツの歴史――分断国家の挑戦と挫折』（中公新書、2020年）ほか。本書では監訳以外に第2、4、9章の翻訳を担当した。
＊ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。