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シリア獄中獄外

著:ヤシーン・ハージュ・サーレハ
訳:岡崎 弘樹

紙版

内容紹介

「監獄経験を記すことは独裁政権によって引き裂かれることへの抵抗なのです。戦う相手は独裁であり、政治囚であり、また収監を強いる政治です。となれば監獄の物語や経験談をイデオロギーや神話から脱却させる必要があります。監獄が個性を消し去るのであれば、監獄について書くことは、その野蛮な腹を切り裂いて個々人の物語をひとつひとつ救いだすことです」

半世紀にわたって存続する「アサドのシリア」。国際的に支えられた独裁国家にあって監獄は「国民的経験」と化している。ハーフェズ政権下の1980年、反体制派組織に所属していたかどで拘束され、16年ものあいだ獄中につながれたアレッポ大学医学部生――今世紀に入って「ハヤート」「ナハ―ル」ほか汎アラブ紙上で論陣を張り、「アラブの春」以後はその発言が世界的に注目されるにいたったシリア人作家・ジャーナリストがみずからの監獄経験、出獄後の元政治囚の生活、獄外情勢をめぐって綴った政治的省察。

目次

日本語版によせて

基本的な事実関係

第1章 年月と場所の面持ち
第2章 パルミラへの道
第3章 監獄の生活と時間
第4章 シリアの元政治囚の世界
第5章 監獄への郷愁
第6章 ブルジョワ化した左派勢力の元政治囚
第7章 知識人の監獄でなく〈監獄の知識人〉
第8章 監獄で私は解放され、革命を経験した
第9章 収監と監獄への馴化
第10章 忘却の地、シリア
第11章 政治としてのパルミラ アサド帝国の秘密工場

アラビア語初版序文
フランス語版序文
アラビア語第二版序文
訳者解説

著者略歴

著:ヤシーン・ハージュ・サーレハ
シリア人作家。1961年、ラッカ生まれ。1980年、アレッポ大学医学部在学中、反体制派民主化組織に所属していたため当局に拘束され、1996年まで収監される。2000年代に「ハヤート」ほか汎アラブ紙上でシリアやアラブの政治・社会・文化に関する論考を発表、2011年以降はシリア革命に参加した代表的知識人(他に作家のサマル・ヤズベクなど)として世界的に注目され、「ガーディアン」「ル・モンド」「ニューヨーク・タイムズ」などに論説が翻訳掲載されている。ジャーナリストとしての業績により2012年プリンス・クラウス賞(オランダ)、2017年クルト・トゥホルスキー賞(スウェーデン)受賞。革命以後に国内潜伏生活を続けるも2013年、トルコに脱出。2017年以降、ベルリン高等研究所研究員としてドイツに滞在。
訳:岡崎 弘樹
1975年生まれ。2002年、一橋大学社会学研究科修士課程修了。2003-09年、フランス中東研究所研究員や日本大使館の政務アタッシェとしてダマスカスに滞在。2009年、パリ第3大学アラブ研究科修士課程に進み、2016年同大学にて19世紀末から20世紀初頭のアラブ政治思想研究に関する博士論文で社会学博士号取得。日本学術振興会特別研究員(PD)、京都大学や大阪大学ほかで非常勤講師。アラブ近代政治思想および現代シリア文化研究。

ISBN:9784622089117
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:264ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2020年06月
発売日:2020年06月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH