歴史叙述としての平家物語
著:塩山貴奈
紙版
内容紹介
成立以来、さまざまなかたちで広く流布し、社会への大きな効力を持ちつづけてきた『平家物語』。
現代にいたるまで、源平の時代にたいするイメージや歴史認識に小さからぬ影響を与え続けているこの物語には、史実とは距離のある叙述がところどころに散りばめられている。
史実とは異なる「歴史」を語る『平家物語』の歴史叙述とは、いったいいかなるものなのか。何を語るべく成立したものなのか―。
平家嫡流たる小松家にかんする描写のありかたや東大寺の勧進聖、俊乗房重源をめぐる中世の言説などを、これまであまり注目されてこなかった事柄や資料などへ着目し、多角的に検討。
あらたな角度から史実と虚構を含みこんだ『平家物語』の歴史叙述の相貌を照射する。
目次
序
第一部 小松家の物語
第一章 土佐守宗実説話成立考
第二章 平重盛の法名をめぐって
第三章 「小松家」のあり方と宗実説話
第二部 物語の形成と展開
第一章 頼朝助命譚にみる重盛と頼朝
第二章 「重衡被斬」の成立背景
第三章 興福寺大乗院尋尊の記す源平の時代
第三部 中世の言説にみる重源
第一章 重源の入宋をめぐる言説とその展開
第二章 重源像の変遷―「匪直也人」「南無阿弥陀仏」―
第三章 重源と東大寺・醍醐寺・高野山の語られ方
第四章 阿波守宗親説話の形成と人物
第五章 『平家物語』の重源
結
あとがき
初出一覧
索引