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日本近代史12の謎を解く

伝承と美談の狭間で

著:秦 郁彦

紙版

内容紹介

歌人の大町桂月(おおまちけいげつ)から「鬼才」と評された女流歌人・与謝野晶子は、弟が日露戦争に出征することを嘆いて「あゝをとうとよ君を泣く 君死にたまふことなかれ」という有名な一節で始まる歌を詠んだ。反響は小さくなかった。前出の大町は「乱臣なり、賊子なり、国家の刑罰を加ふべき罪なり」と激しく論難。これに対し晶子は「この御評、一も二もなく服しかね候」「歌は歌に候」「誠の心を歌にしただけ」「少女と申す者、誰しも戦嫌いにて候」と反撃し一歩も引かなかった。覚悟をもって晶子が発表したこの歌は、今では小中学校の教科書にも登場する、日本の反戦歌の代表的作品になっている。
では、この歌を贈られた晶子の弟・籌三郎(ちゅうざぶろう)は、結局日露戦争で死ななかったのだろうか?
そしてこの歌に関連して、さらに興味深い謎がある。太平洋戦争の際には、晶子は四男に対して「水軍の大尉となりてわが四郎 み軍(いくさ)にゆくたけく戦へ」と詠んでいるのだ。晶子は「転向」したのか? 出色の女流歌人の真意とは?
本書ではこのほか、「昭和天皇を襲ったテロリスト像─―難波大助と金子文子の挑戦」
「南雲機動部隊 対 エンタープライズ―─索敵のミステリー」「ガダルカナル戦の起点と終点」「知られざるインド謀略工作の内幕」「日本共産党太平記―─山村工作隊と火炎びんの季節」「1945年ロシアによる三船遭難事件」などの近代史の謎に迫る。ゆったりとした時間に存分に楽しみたい、極上の歴史読み物である。

著者略歴

著:秦 郁彦
1932年(昭和7 年)山口県生まれ。現代史家(日本近現代史・軍事史)。
1956年東京大学法学部卒業。同年大蔵省入省後、ハーバード大学、コロンビア大学留学、防衛研修所教官、大蔵省財政史室室長、プリンストン大学客員教授、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授を歴任。法学博士。1993年度の菊池寛賞を受賞。2014年に『明と暗のノモンハン戦史』(PHP研究所・講談社学術文庫)で毎日出版文化賞。第30回正論大賞を受賞。
他に『南京事件 増補版』(中公新書)、『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)、『病気の日本近代史』(文藝春秋・小学館新書)、『昭和史の秘話を追う』(PHP研究所)、""Hirohito, The Showa Emperor in War and Peace”(Global Oriental, 2007)などがある。

ISBN:9784569856728
出版社:PHP研究所
判型:4-6
ページ数:368ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ