この本は「入門」や「書き方」の類や堂々と「表現法」と名のる本とも、高らかに「技術」を謳う文章テクニックの本とも違う。▼日本語研究の第一人者が、その研究成果の上に立って、“書く”という立場からまとめたひとつの文章読本だ。▼漱石、芥川、川端、井伏、太宰らの、日本を代表する作家の名文を取り上げ、「わかりやすさと思いやり」「唐突な書き出し」「レトリックのねらい」といった文体の決め手となる発想や文章表現のコツを21のポイントに分けて体系的に解説。▼(本文より、一部抜粋)▼【人物を描く】▼「駅長さん、弟をよく見てやって、お願いです。」 悲しいほど美しい声であった。高い響きのまゝ夜の雪から木魂して来そうだった。──川端康成『雪国』▼→心情的な「悲しみ」と感覚的な「美しさ」という思いがけない結びつきが読者をはっとさせる。▼優れた表現の妙に感心するうちに、自らの「文体」をつかむためのヒントが見えてくる。