万葉の代表歌人で、才色兼備の女性として激動の飛鳥時代を生き抜いたとされる額田王。だが実際は、彼女の実像はいまだ多くの謎に包まれている。なぜなら歌集である『万葉集』における活躍ぶりとは対照的に、天武・天智両天皇の妃という重要な地位にあったはずの彼女が、正史である『日本書紀』ではわずかな記述に留まり、ほとんど無視された存在になっているからだ。▼そこで、この奇妙なギャップに着目し、『万葉集』を歴史書として捉え直すという独自の発想で、額田王の素顔に迫ろうというのが本書の試みだ。▼すると『万葉集』に収録された歌の配列や作者の並べ方が、古代史上の重大な出来事や事件の主要人物と奇妙に一致するそうだ。しかも和歌には、正史から抹殺された歴史の真実を託そうとする作者の明確な意思が感じとれるという。▼「あかねさす紫野……」など、額田王の代表歌に秘められた真意が解き明かされた時、読者は新鮮な衝撃を覚えるに違いない。