「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり……」「行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず……」学生時代にならい覚えた一節が、いまでも口をついて出てくる人も多いだろう。日本語は美しい。そしてその日本語で書かれた古典文学は本当に面白いのである。しかし、学生時代は、受験や試験のための勉強だったため、作品の本当の面白さ、言葉の調べの美しさを味わっていた人はごくわずかではなかろうか。今、改めて古典に触れてみると、韻律の素晴らしさもさることながら、奇想天外なストーリーあり、赤裸々な告白あり、あるいは人間性を深く掘り下げた物ありの、現代でも充分に楽しめる内容ばかりである。本書は、日本の古典の代表的な一節と、その作品の概要、描かれた背景などをコンパクトに解説したものである。古典文学の世界にそれほど馴染みのない読者にとって、古典を楽しみ、日本語を味わう糸口を与えてくれる格好の一冊である。