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裁判官対話:国際化する司法の協働と攻防

Judicial Dialogue: Cooperation and Competition among Courts and Tribunals

編著:伊藤 洋一

紙版

内容紹介

「裁判官対話」とは、「裁判官」が他の裁判所の裁判官と「対話」する現象を指し、近年特にヨーロッパでは盛んに使われるようになった言葉である。
日本国内では、「グローバル化」が叫ばれる中、実際には、国際的活動に対応できる高度な能力持つ法曹養成は滞り、また国内法の世界に閉じ籠もる内向きの姿勢が強まっている観がある。しかし、このような日本国内における逆説的状況とは裏腹に、国外、特にヨーロッパに目を転じるなら、種々のレベルにおける裁判機関相互間で展開される「裁判官対話」が浸透し、その学問的検討が活発化している。
こうした状況を踏まえ、裁判官対話の実際を捉え、理論的探究を徹底的に行い、裁判実務への(からの)示唆、そしてその臨界点を探る。

目次

第1章 「裁判官対話」の概念
[1]「裁判官対話」とは何か――概念の概括的検討……須網隆夫

第2章 政治学における「裁判官対話」研究の動向
[2]国際関係論の視角からみた法化・司法化現象……網谷龍介
[3]「政治と司法」から「司法の政治」へ――ヨーロッパ司法政治研究の動向と展望……網谷龍介
[4]マルチ・レヴェルの司法政治の生成――EUにおける裁判官対話発展の一帰結……網谷龍介

第3章 国際法における「裁判官対話」の理論的問題
[5]国際法における「裁判官対話」――その理論的背景……寺谷広司
[6]人権条約システム参加の背景及び促進戦略とその理論的含意――特に強制失踪条約を例に……寺谷広司
[7]裁判官対話批判論―― 一国民主主義との不親和性……濵本正太郎

第4章 EEAにおける「同質性」原理と「裁判官対話」
[8]EEA法における「裁判官対話」――EEA法違反に基づく国家賠償法理の展開を素材に……伊藤洋一
[9]多元的法システムにおける人権保障――EEA-EFTA諸国における「同質性」の確保とその展開……寺谷広司

第5章 EUの国内裁判所と「裁判官対話」
[10]「裁判官対話」とフランス公法判例――条約の法律に対する優越を素材に……伊藤洋一
[11]フランス国務院と裁判官対話の「臨界」……伊藤洋一
[12]なぜ条約が憲法に優位するのか――ベルギーとルクセンブルクの実践……濵本正太郎

第6章 ヨーロッパ人権条約と「裁判官対話」
[13]ヨーロッパ人権条約第16議定書と「裁判官対話」……伊藤洋一
[14]ヨーロッパ人権条約第16議定書と裁判官対話の「臨界」――イタリアにおける批准論議を素材に……伊藤洋一
[15]欧州を越える欧州――ヴェニス委員会による裁判官対話の普遍的展開……寺谷広司

第7章 国際裁判機関間の「裁判官対話」
[16]地域人権機関と裁判官対話――普遍的一体性と地域的特殊性の間……寺谷広司
[17]国際裁判機関間の批判的対話……濵本正太郎

第8章 中南米における「裁判官対話」
[18]中南米(ラテンアメリカ・カリブ)の国際裁判所と裁判官対話……中井愛子
[19]中米統合機構における裁判官対話――地域的伝統、国内的伝統、そしてEUの影響……中井愛子
[20]メルコスール最高裁判所常設フォーラムの司法外交と裁判官対話……澤田眞治

第9章 アジア・日本における「裁判官対話」
[21]アジアにおける裁判官対話――韓国憲法裁判所の活動を中心に……須網隆夫
[22]ASEANにおける裁判官対話の制度化――裁判官が会うことの意味……須網隆夫
[23]裁判所は誰に語るのか――日本の裁判所における国際法・外国法の(不)参照……濵本正太郎
[24]知財高裁と裁判官対話――日本における裁判官対話の可能性……須網隆夫

著者略歴

編著:伊藤 洋一
伊藤 洋一 (いとう・よういち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

ISBN:9784535525887
出版社:日本評論社
判型:A5
ページ数:328ページ
定価:6000円(本体)
発行年月日:2023年02月
発売日:2023年02月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNAA