バリュエーションの教科書
企業価値・M&Aの本質と実務
著:森生 明
内容紹介
株式投資から企業IR、M&A、事業再生、「会社は誰のものか?」「金融資本主義の功罪」の議論まで――。M&A、ファイナンスの最前線で活躍する実務家から絶大な評価を受ける著者による最新作。難解な金融・ファイナンスの世界を「実務現場感覚」でシンプルに説き明かす。ファイナンスは積み上げ型で学ぶより俯瞰して理解せよというスタンスの下、基本から最先端の理論までを網羅した新しいテキスト。
【本書の「はじめに」より】
企業価値算定やM&Aは、ファイナンスの上級・応用編、ピラミッドの上部に位置づけられることが多い。そこへ到達するには、1つひとつ石を積み上げなければならず、その土台作りのために、数学や統計学の知識を身につける必要がある。こう言われると、苦難の道のりとなる。 本書は、世の常識的スタイル(≒欧米のビジネススクールで教わる手順)を無視して、ピラミッドの全体像を見てから骨格と枠組みを作り、そこに肉づけをして完成させるというアプローチを取っている。
企業価値算定は、専門家が複雑な理論やモデルを駆使しなければできないような世界ではなく、企業経営者と投資家が建設的にコミュニケーションを取るための共通言語として、使い勝手の良いものでなければならない。バリュエーションを身近で手触り感のあるものにすることによって、世間を騒がせる経済ニュースの意味や背景がより鮮明に見えるようになり、グローバル取引の交渉や投資家へのIR活動の場で役立つスキルを手に入れることができる。
同時に、2000年以降のバリュエーションの世界がより難しさを増していることも、おそらく事実だろう。事業活動を取り巻く「リスク」がますます多様かつ複雑になっているからだ。その結果、ひと昔前の経済成長時代のファイナンス理論だけでは対応しきれなくなったり、リスク管理の手法としてデリバティブ取引なるものが活発化して市場を攪乱したり、という現象が起こっている。経営者や投資家やファイナンス理論の専門家が、それぞれの定義とニュアンスで使っている「リスク」なるものを整理し直し、それらが企業価値算定や投資の意思決定にどう反映されるのか、を検討する。
目次
第1部 企業価値算定(バリュエーション)の基本構造
第1章 企業価値は財務諸表にどう表れるのか
第2章 基本公式から一歩深掘りする
第3章 DCF評価と倍率評価は、実は同じ
第2部 基本構造から読み解くM&Aの世界と資本主義社会の課題
第4章 日本の株式市場は「サヤ取り天国」なのか
第5章 事業や業界を再編するM&A活動
第6章 日本市場に押し寄せる資本の論理とその課題・限界
第3部 実務応用編:理論と実務の橋渡しの試み
第7章 リスクを数字にする方法
第8章 経営支配権を売り買いするM&Aの世界
第9章 リスクマネジメントをオプションで捉える
第10章 株式のオプション価値と事業再生