校則改革
理不尽な生徒指導に苦しむ教師たちの挑戦
編著:河崎仁志
編著:斉藤ひでみ
編著:内田良
内容紹介
生徒に〝理不尽校則〟を
「押し付けるのはもうできない」
中学校・高校教師の「校則改正」の実践を紹介
全国的に地毛矯正や下着の色の検査、髪型の厳格な規定など生徒の人権を脅かす校則が是正され始めてきています。明らかに人権侵害が指摘される項目以外にも
・寒暖の変化が激しい年なのに冬服の解禁日が決められている
・男子はスラックス、女子はスカート
など、教師や生徒の大体が問題視していなくても、ある生徒に対しては非情なまでに嫌悪感を与える校則が多く存在しています。そもそも教師は、生徒に押し付けている校則の制定理由を、しっかりと説明できるでしょうか?「校則を緩めると学校が荒れる」?
本書座談会では以下のように言及された先生がいらっしゃいました。
かつては、生徒の心の変化を読み取るうえで、服装などの変化を見とるのは、有効な手段だったと思うのです。「目つきや表情が悪くなった」から次に「服装等が変わった」、だから変化の原因となっている心情に向き合おう、と。でも、今は「まず服装を指導する」。これでは心情の部分が全く解決していなくて、恰好だけ直すのなら、その指導は一体何のために行っているのでしょうか。
学校の主役は子どもたちのはずです。本書では子どもが快適に過ごせる環境における校則の在り方を追究します。
まずは、各種メディアで話題になった、「兵庫県明石市立朝霧中学校の校則の改正の具体例」を示しています。
そして、第1章から第5章までは、中学校と高校それぞれ現役の教師による葛藤と闘いを詰めました。
第1章と第2章は中学校、第4章は高校における具体的な改革実践を掲載しています。教師目線だからこそ、生徒へのやさしい思いだけでなく、教師の働き方の展望も記されている。教師の業務削減を意識している点も、他書に類を見ない本書の特長です。
第3章と第5章は、前者が中学校、後者が高校の現役教師による「覆面座談会」です。あえて、とくに改革に取り組んでいるわけではない教師を交えています。ごくありふれた教師のリアルな声から校則問題を考えたい読者は、覆面座談会から読み始めることをおすすめします。
最後の第6章は、過去からいまへのメッセージ(教訓)である。かつて個性尊重を求めて闘った1990年代の教師の実践と、いま私たちが目指すべき「校則改革」を内田良先生に橋渡ししていただきました。
また、随所にコラムとして、校則問題に取り組む有識者らを中心に、マスコミ関係者、研究者、弁護士、支援活動団体代表、元校長、小学校教師、中学校教師と、さまざまな角度から校則改革に向けたアイデアを提案いただきました。
今後、校則を見直すことを検討されていらっしゃる先生や、校則に苦しむ保護者さまなど、多くの人のヒントになると思っています。
目次
巻頭資料 校則の新旧比較と改正に伴う動きの時系列表 令和二年度朝霧中学校 校則を考える会
第一章 校則改革で得られるもの ―兵庫県明石市立朝霧中学校の事例から 兵庫県明石市立朝霧中学校教諭 河﨑仁志
第二章 中学校校則改正 不登校対策から、校則見直しへ 福岡県糸島市立前原西中学校主幹教諭 森恵美
コラム① 正の多様性を前提とした学校のルールを作ろう ~LGBTユース支援の立場から~ 一般社団法人にじーず代表 遠藤まめた
第三章 中学校教師 校則に関する覆面座談会
コラム② 不人情の教育 元東京都世田谷区立桜丘中学校長 西郷孝彦
コラム③ 小学校教師が考える思考力を育てる校則指導 公立小学校教諭 五十公埜雅明
第四章 高校教師からの令和の校則改革案 岐阜県高等学校教諭 斉藤ひでみ
コラム④ 誰の声で校則は変わるのか NHK岐阜放送局記者 吉川裕基
第五章 高校教師 校則に関する覆面座談会
コラム⑤ 「個人の尊厳が守られる学校」を実現するために NPO法人ストップいじめナビ!理事・弁護士 真下麻里子
コラム⑥ 外国との比較からみた日本の校則 武庫川女子大学准教授 大津尚志
コラム⑦ 日本社会に人権意識を 「日本若者協議会」代表理事 室橋祐貴
第六章 個性尊重のため先生たちが闘った 内田良
コラム⑧ いま、学校が変わるとき 朝日新聞編集委員 氏岡真弓
コラム⑨ 子どもの権利 大人が声あげよう 弁護士・福岡市立警固中学校PTA元会長 後藤富和
コラム⑩ 自分たちの学校は、自分たちでつくる 熊本大学准教授 苫野一徳
コラム⑪ 嚆矢は放たれた───放送部員との「靴下を折る」校則改革 兵庫県加古川市立陵南中学校 宮本崇志