トラウマの現実に向き合う
新装版
ジャッジメントを手放すということ
著:水島 広子
内容紹介
トラウマ治療や技法について知っていることと、実際にトラウマの治療ができることとは違う。トラウマ体験者は深い傷つきによって、対人関係における「信頼」に問題を抱えていることが多い。したがって、トラウマ治療において最も重要なことは、個別の治療戦略や技法よりも、治療者の姿勢であるとも言える。患者を人間として評価しない、病気の専門家に徹するなど、本書はトラウマに向き合う治療者の姿勢について、誰もが納得できる豊かな提言に満ちている。
目次
◎目次
はじめに
第一章 「不信」という現実に向き合う
「トラウマ患者との出会い」からトラウマの認識まで
トラウマ患者に信頼されるということ
ジャッジメントという暴力
トラウマ治療において特にジャッジメントに注意しなければならない理由
アセスメントとジャッジメント
治療によるトラウマ
治療によるトラウマに向き合う基本姿勢
第二章 「コントロール感覚の喪失」という現実に向き合う
トラウマ体験=コントロール感覚の喪失
「役割の変化」
「役割の変化」の治療
コントロール感覚の回復につながる態度
第三章 「病気」という現実に向き合う
「病気扱い」が嫌われる理由
PTSDは「怪我」か「病気」か
「医学モデル」が持つ意味
対人関係上の役割期待のずれを埋める
役割期待のずれとジャッジメント
回復のプロセスと病気
「患者に変化を起こすこと」と「患者を変えること」の違い
「治療法の選択」のためのアセスメント
第四章 「文脈」という現実に向き合う
「明確化」か「解釈」か
本人の文脈を理解するということ
指標としての違和感
境界性パーソナリティ障害と複雑性PTSD
「ボーダー」という偏見
治療という文脈におけるトラウマ
第五章 「身近な人たち」の現実に向き合う
トラウマ症状は身近な人間関係に影響を与える
症状と認識されないことによるずれ
患者の不和の相手がトラウマ体験者である場合が多い
患者にトラウマ体験を与えた相手が身近な生活圏にいることがある
第六章 「ジャッジメント」の現実に向き合う
治療者・支援者にとってのジャッジメント
「トラウマ体験者の支援」という「役割の変化」
「境界設定」の意味
「境界設定」という「役割期待の調整」
「かわいそう」というジャッジメント
ジャッジメントを手放すということ
相手の現在に集中するということ
トラウマ体験者は「かわいそう」なのか
トラウマ体験者の味方でいるということ
第七章 治療者自身の現実に向き合う
治療者自身のトラウマ
自らのトラウマに向き合う
治療者の価値観の位置づけ
「形」へのとらわれを手放す
トラウマと社会正義
第八章 「トラウマ体験」という現実に向き合う
トラウマと「ゆるし」
対象喪失としてのトラウマ体験
「ゆるし」という究極の選択
自分自身を「ゆるす」ということ