人を守れる人間になれ――。
じいちゃんが、母が、父が、身をもって教えてくれたこと。
「村を出て、東京に行け」と祖父に背中を押され、東京で一人暮らしを始めた瞬一。
人と交わり、若者は強く優しく成長していく。
尾瀬ヶ原が広がる群馬県利根郡片品村で歩荷をしていた祖父に育てられた江藤瞬一。
高校卒業とともに上京し、引越の日雇いバイトをしながら荒川沿いのアパートに住んで四年になる。
かつて故郷で宿屋を営んでいた両親は小学三年生のときに火事で亡くなった。
二人の死は、自分のせいではないかという思いがずっと消えずにいる。
近頃は仕事終わりにバイト仲間と他愛のない話をしたり、
お隣の母子に頼まれて虫退治をしたり、町の人々に馴染みつつあった。
そんなある日、突然祖父が東京にやって来ると言い……。
ひとがつながり、まちができる。僕にもうひとつ、帰る場所ができた。