本書は、古代の住吉大社についての、新研究を踏まえた「概説」ないしは「通史」である。
第1論文では、昭和30年発行の『住吉大社略記』を追いながら、古代の住吉大社についての概略を解説し、問題点を洗い出す。
第2論文では、直木孝次郎氏の「神功皇后実在否定説」の論拠を批判しながら、住吉大社創建にかかわり、住吉大神とともに祭られる神功皇后の実在を証明していく。
第3論文では、神功皇后と一対として語られる武内宿禰の実在を証明し、出自に「紀伊」や「葛城」と深い関わりがあることを指摘する。古代史の年代確定に必須の知識である「讖緯説」についても解りやすく解説する。
第4論文では、神功皇后の朝鮮半島出兵前に行われた、熊・襲2国の征伐について論じる。本論文は従来の通説とは全く異なる新説である。
第5論文では、かつては史実を疑われていた神功皇后の朝鮮半島への出兵を論証する。神功皇后摂政紀五十二年条の記事と七支刀の銘文とが内容的に相関しているという指摘は新説である。
第6論文では、住吉大神の顕現から、今の住吉大社に祀られるまでの過程を、神話と史実の関係を説明しながら、解説する。
第7論文は、現存の『住吉大社神代記』についての書誌学的な解説である。『田中卓著作集』第7巻以降の新たな考察も加えられている。
第8論文は、住吉大社に草薙の釼があったことを指摘する新研究。
第9論文では、住吉大社は和泉と南河内、そして生駒山全体を含むほどの広大な神領を有していたことを立証する。
第10論文では、住吉大社が播磨国9万8千余町の神領を持っていたことを新史料によって論証し、伊勢神宮の神領と対比しながら、古代の神領社会を提唱する。
第11論文では、『住吉大社神代記』の「船木等本記」は崇神・垂仁天皇の崩年干支についても紀記にはない史料を提供し、用字法からみても非常に古く、斉明天皇五年以前の、津守氏側の古伝記録であることを解説する。
第12論文では、住吉大神は遣唐使と関係が深いが、その遣唐使が出発した「墨江の津」「難波津」は、大阪の淀川下流に位置する長柄の船瀬であることを具体的に四至を示して論証する。
全論文が平易な講義調で語られており、田中古代史学の入門書であり、新説の総括として最適の1冊である。