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越境する認知科学 2

創造性はどこからくるか

潜在処理,外的資源,身体性から考える

編:日本認知科学会
著:阿部 慶賀

紙版

内容紹介

 「創造性」というと優れた人間が発揮する才能と思われがちだ。しかし近年の認知科学研究は,創造性は個人の才能ではなく,他者との協同や外化など,偏在する外部資源との相互作用なくしては成り立たないことを明らかにしてきた。一方,創造的思考を支える心的メカニズムの研究からは,アイデアの「生みの苦しみ」は単なる停滞ではないことや潜在的に洞察の準備が進んでいることも明らかにしつつある。
 こうした知見を背景に,創造性はそれに特化したメカニズムや処理機構を前提としなくとも説明できる,ということが研究者間で合意を得つつある。そこで本書では,すでに知見が蓄積されている創造性の内的処理や外的資源の紹介に加え,身体がアイデア生成や発見に貢献する可能性についても言及し,これまでの「個人内に局在する」創造性観から「誰もが備え,どこにでも遍在する」創造性観への飛躍を試みる。
 潜在処理による創造的思考への影響,作業環境の影響,他者との協同の効果,そしてアイデア生成時の身体性入力の影響やVRを使った身体の変化が及ぼす影響なども取り上げる。
 本書を通して,我々の創造性を触発する契機がいかに多様であり,そして誰もが創造性を発揮できるとともに誰かの創造性を触発しうる,ということが伝われば幸いである。

目次

第1章 ひらめきはどのように訪れるか
1.1 創造性への誤解
1.2 脱・伝記的アプローチ
1.3 創造性を捉えるための実験課題
1.4 ひらめきはどのような人に訪れるか
1.5 創造性への誤解からの脱却

第2章 ひらめきの訪れを予測できるか
2.1 ひらめきやすさは予測できるか
2.2 ひらめきやすい人とそうでない人はどう違うか
2.3 身体に表れるひらめきの前兆
2.4 ひらめきの過程は自覚できない
2.5 創造的思考の突発性と漸進性

第3章 創造的思考を助ける外的資源と外化
3.1 創造性を支える環境要因・外的資源
3.2 創造的思考を助ける外化
3.3 外化としての言語化
3.4 言語化は創造性の敵か味方か
3.5 環境・外的資源に支えられた創造性

第4章 外的資源としての他者
4.1 「三人寄れば文殊の知恵」は本当か
4.2 協同する他者は実在しなくてもよいか
4.3 心の中で作られる他者
4.4 創造性は一人で発揮できるか

第5章 外的資源と創造性をつなぐ身体
5.1 外的資源の利用とアフォーダンス
5.2 心的処理に働きかける身体
5.3 創造的思考を助ける身体
5.4 心と環境をつなぐ身体

第6章 創造性と曖昧になっていく身体
6.1 「私の身体」という感覚
6.2 自他を分ける身体
6.3 身体が変わると思考も変わるか
6.4 水槽の中の脳は創造的になれるか

終章 創造性はどこからくるか,どこにあるか

参考文献

索 引

コラム① 神秘的アプローチをしてしまう私たち
コラム② 洞察問題とは何か
コラム③ 「盲視」目は見えていなくても見ている
コラム④ 思い込みの力
コラム⑤ ひらめきは夢の中でみつかるか
コラム⑤ 姿勢は知覚を変える
コラム⑥ 脳をだまして身体を変える

ISBN:9784320094628
出版社:共立出版
判型:4-6
ページ数:176ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:UB