出版書誌データベース

　医療現場ではオーダエントリーシステムや電子カルテのようなコンピュータシステムが導入され、医療現場でのコンピュータシステムは、いまや不可欠な存在となっている。医療情報の特質から、個人情報保護、プライバシー保護に十分な配慮が必要であり、マルチメディア性、連続性、多層性などのため、情報自体が複雑である。一方、医療情報システムに携わる医療スタッフや事務職員などの中には、十分なコンピュータの知識をもたず、これらのシステムを利用している人もいるため、誤動作やデータの漏洩が発生していることも報告されている。このような社会背景から医療情報に携わる人材の育成のため、一般社団法人 日本医療情報学会がおこなっている医療情報技師、上級医療情報技師、医療情報基礎知識検定試験に、数多くの人々が受験して、技術向上に努めている。
　本書は、初めて医療情報にふれる人を対象にした、医療情報の基礎を網羅するICT技術のテキストとして、10年あまり前に初版が刊行された。多くの大学や専門学校で利用されており、多くの読者が医療情報基礎知識検定を受検されているのではないかと実感している。しかしながら、この10年間で、情報処理技術の発展や関連する法規・ガイドラインも制定・改正され、現在の状況と本書の内容に隔たりが生じてきた。多くの変化がある中で、すべてを網羅し、追加するべきであるが、大学や専門学校の半期15回の授業で学べるという当初の構成は変更せず、必要最低限の内容を取捨選択することにした。本書の内容を確認することで、医療情報技師、上級医療情報技師に求められる知識をより簡便に学ぶことができる内容だと考えている。本書の特色を以下に記す。
１）健康・医療・福祉分野のICT技術の入門書。短く、平易な文章、かつ、多くの挿絵でわかりやすい。
２）コンピュータの知識がほとんどない人、または、コンピュータにあまり興味のない文系の人でもわかりやすい。
３）健康・医療・福祉分野へ進出する学生が医療情報の流れを理解できる。
４）医療情報技師受験の基礎知識を獲得できる。
５）医療情報基礎知識検定の試験内容を網羅。
６）医療機関の各種部門の業務内容を確認できる。
７）医療機関の各種部門システムの役割を確認できる。
８）医療情報にかかわる最低限の法律・法規を学ぶことができる。

第1部　医療情報を取り扱うための基本的な情報処理技術

第1章　情報の表現
1.1　アナログとデジタル
1.2　情報の単位
1.3　文字コード
1.4　圧縮
1.5　画像情報
問　題

第2章　ハードウェア
2.1　コンピュータハードウェアの基本構成
2.2　中央処理装置
2.3　記憶装置
　2.3.1　主記憶装置
　2.3.2　補助記憶装置
2.4　入力装置
2.5　出力装置
　2.5.1　ディスプレイ
　2.5.2　プリンタ
2.6　インタフェース
　2.6.1　インタフェースとは
　2.6.2　代表的なシリアルインタフェース
　2.6.3　ディスプレイ用インタフェース
2.7　コンピュータの種類
　2.7.1　コンピュータ
　2.7.2　携帯機器
2.8　耐障害性
　2.8.1　ハードディスクの多重化
　2.8.2　無停電電源装置
問　題

第3章　ソフトウェア
3.1　ソフトウェアの種類
3.2　システムソフトウェア
　3.2.1　ファームウェア
　3.2.2　オペレーティングシステム
　3.2.3　ミドルウェア
　3.2.4　コンピュータ言語
3.3　アプリケーションソフトウェア
3.4　ソフトウェアライセンス
問　題

第4章　ネットワーク
4.1　ネットワークの基礎
　4.1.1　LANとWAN
　4.1.2　クライアント／サーバ
　4.1.3　パケット通信
　4.1.4　プロトコル
4.2　ネットワーク機器
　4.2.1　データをやりとりするもの
　4.2.2　データを中継するもの
　4.2.3　機器同士をつなげるもの
　4.2.4　ブロードバンド
4.3　TCP/IP
　4.3.1　イーサネット
　4.3.2　TCPとUDP
　4.3.3　IPアドレス
4.4　ネットワークサービス
　4.4.1　電子メール
　4.4.2　FTP
　4.4.3　DHCP
　4.4.4　HTTP
　4.4.5　プロキシサーバ
4.5　クラウドコンピューティング
問　題

第5章　データベース
5.1　関係データベース
　5.1.1　表
　5.1.2　キー
　5.1.3　正規化
5.2　データベース言語
5.3　データベース管理システム
　5.3.1　バックアップ
　5.3.2　データベースファイルの種類
　5.3.3　トランザクション
5.4　データベースの二次利用
問　題

第6章　情報セキュリティ
6.1　情報セキュリティとは
6.2　脅威
6.3　コンピュータウイルス
6.4　情報セキュリティ対策
　6.4.1　人的・組織的セキュリティ対策
　6.4.2　物理的セキュリティ対策
　6.4.3　技術的セキュリティ対策
　6.4.4　無線LANのセキュリティ技術
問　題


第2部　医療情報の基礎

第7章　医療従事者と記録
7.1　病院とは
7.2　病院で働く職種
　7.2.1　医師
　7.2.2　看護師
　7.2.3　薬剤師
　7.2.4　臨床検査技師
　7.2.5　診療放射線技師
　7.2.6　リハビリテーションにかかわる資格
　7.2.7　臨床工学技士
　7.2.8　管理栄養士
　7.2.9　公認心理師
　7.2.10　診療情報管理士
　7.2.11　医療情報技師
7.3　患者と診療プロセス
7.4　医療情報の特性および取扱い
　7.4.1　診療録の関連法規
　7.4.2　診療録の定義と作成方法
　7.4.3　診療録の記載方法と利用場面
　7.4.4　医療情報の表示形態と特徴
　7.4.5　医療機関における依頼・指示情報の特徴
　7.4.6　診療録の利用と電子化
　7.4.7　医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
　7.4.8　医療情報の開示に関する法規
　7.4.9　医療情報の利用促進に関する法規
問　題

第8章　病院組織における部門
8.1　診療部門
　8.1.1　薬剤部門
　8.1.2　看護部門
　8.1.3　医事会計部門
　8.1.4　中央診療部門
　8.1.5　チーム医療
8.2　運営管理部門
　8.2.1　経営企画部門
　8.2.2　医療情報部門
　8.2.3　診療情報管理部門
　8.2.4　医療安全管理部門
　8.2.5　物流センター
　8.2.6　ME機器管理部門
問　題

第9章　医療情報システムの基本的な利用形態と機能
9.1　医療情報システムの役割
9.2　病院情報システムの種類
　9.2.1　部門システム
　9.2.2　部門と部門を結ぶシステムの特徴
問　題

第10章　保健・医療・福祉情報システム
10.1　診療所における情報システム
10.2　介護保険制度における情報システム
10.3　保健・医療・福祉における情報システムと広域に対応する情報システム
　10.3.1　保健に関する情報システム
　10.3.2　遠隔医療
　10.3.3　地域医療ネットワークシステム
　10.3.4　福祉行政に関する情報提供システム
問　題

第11章　医療情報の共有・活用を図るための基本的な方策
11.1　医療における標準化の問題点
11.2　標準化のメリット
11.3　標準化にかかわる組織と標準化の普及
11.4　標準規格と用語・コード
11.5　SS-MIX
11.6　情報分析
　11.6.1　情報の抽出
　11.6.2　統計とは
　11.6.3　統計的分析
問　題

付　録
付録1　10進数と2進数の相互変換
付録2　健康・医療・福祉分野の用語解説

索　引