それは「医学書」なのか、「読み物」なのか。理系×文系という対立構造のなかでは読み解けない、面白い江戸の本の世界!
江戸時代には医学書や本草書の知識無しには理解できない作品や文化交流が存在していた。それは現代風に医学と文学とにジャンル分けして論じていては、そのありようを把握できるはずもないものである。
本書は、医学書に通じていなければ読み解けない作品、逆に言えば医学書に通じていれば簡単に読み解くことのできる作品を紹介、また、江戸期を通じて愛されたヤブ医者竹斎(ちくさい)の周辺を詳しくたどりながら、医学と文学が手を携えて作り上げた豊かな世界をつぶさに検証する。本書により、いままでとはまったく違ったもう一つの「江戸時代」が導き出される。
【……医学書と読み物がそれぞれの必要性から、接近あるいは越境する現象が近世にはあったのである。というよりは、その当たり前の現象を、現代の学問体系から勝手に理系/文系の対立構造を押しつけて、別の領域として存在しているがごとくの共同幻想を抱く側にそもそもの問題があるのかもしれない。医学書と読み物との間には実は何もなく、ただ現代の学問が作り上げた「異領域」という幻想があるだけなのかもしれない。】……第1章第6節より