源氏物語は東アジア文学や文化をいかに受容し、
独自の文学世界を創造したか--
源氏物語や仏教説話には、同時代の新しい東アジアの文学・文化が浸透している。漢籍や仏典、宮中行事、儀式書をよりどころとして、東アジアの影響を受けた当時の知識や教養、制度や慣習の中において物語を読み解くとともに、東アジアの視点から日本古典文学の達成を理解する。
【本書で「東アジア」と銘打った理由は、漢籍や仏典が前近代において東アジアの共通の文化であったという意味だけではなく、源氏物語やここに取り上げた物語や仏教説話はその時代の中国、韓国の文学や文化を、日本の文学がいわば同時代の世界の新しい文学や文化として意識しつつ受容し咀嚼して、それに倣い、それを越える創作に腐心したのであろうと考えるからである。それらはその時代における中国・韓国の文学や文化の潮流を意識した文学の創出であったろうという意味であり、平安文学は東アジアの文学として共通する文学的な主題を取り上げていたという側面を押さえておくべきであろうと考える。それは大局的にいえば前近代の日本文学が多かれ少なかれ有した一面でもあったのであり、古典文学を東アジアの視点から見直すことで、日本文学の達成を客観的にまた相対的に理解することにも繋がるであろうと考える。】
……「まえがき」より