平安時代のことばが深層に秘めている力を解き明かす。
『源氏物語』の中で文脈の表層に表される出来事と深層にもつ別の意味とが絡み合う様相を明らかにし、『蜻蛉日記』では「私」を語ることがどのように「公」の世界へつながっているのかに着目。一人の女性がいかに新しい散文を作り上げていったのか、平安時代に女性が「書く」ことがもっていた意味を問い直す。
【第一編から第三編までには『源氏物語』をはじめとする物語を分析対象とした論考を収めている。ここでは、物語の深層にあって物語を動かす力となっている発想や和歌のことばが物語を立ち上げていく過程を「生成」ということばでとらえたいと考えた。
第四編には日記文学を対象とした論考を収めた。ここでは、平安時代の仮名日記が、近代になって文学史に組み入れられていく際に働いた時代の力に焦点を当てて、「日記文学」というジャンルが形成されていく過程を「生成」ということばで表現することを意図した。
...振り返ってみると、終始一貫した方法意識を持ちながら研究を続けてきたわけではなく、興味の対象も方法もさまざまに移り変わってきた。しかし、平安時代のことばの手触りを確かめ、それらのことばが深層に秘めている力を解き明かしたいという思いは変わっていない。】.........はじめにより