ルネッサンスは変化と転換の時代であった.その影響は文芸や美術に限らず,むしろいっそう深く,ヨーロッパ社会のすべて,技術,産業,政治,戦争,宗教,あるいは人口動態にいたるまで,社会のあらゆる局面に及んだ.イタリア半島で十三世紀最後の四半期辺りから始まったルネッサンスはその都市国家群が繁栄を謳歌したのち,十六世紀初頭には破綻してしまう.これを引き起こしたのは,もっと大きな政治単位である「国民国家」を形成するのに成功したフランス,スペイン,そしてイギリスの基をなしたイングランドといった勢力で,これらが以後の一世紀あまり,(国家統一に失敗したドイツも含めて)ルネッサンスを展開し,近代の基礎を築いていく――.
中世の終わりにして,近代を見はるかす転換期に直面した人々,そして諸地域の変化を解き明かし,ルネッサンスの全体像を経済,政治,宗教をふまえた斬新な観点で描き出した通史.
著者略歴
東京大学名誉教授/ルネッサンス研究/1934年生れ.71年東京大学文学部助教授(フランス文学).81年同教授(イタリア文学).85年イタリア・ナポリ大学客員教授(日本文学).93年東京大学文学部長.94年在ローマ日本文化会館長.98年政策研究大学院大学副学長などを歴任.主要著書に『イタリア文学史』(共著,東京大学出版会,85年)『落語『死神』の世界』(青蛙房,02年),『モーツアルトはオペラ――歌芝居としての魅力をさぐる』(音楽之友社,06年)など.主要訳書に,ヴィーコ『ヴィーコ自叙伝』(みすず書房,91年),ランペドゥーザ他『南欧怪談三題』(未來社,11年),グゥラート『忘れ去られた王国――落日の麗江・雲南滞在記』(スタイルノート,14年)など.
【推薦の言】
岩倉具忠(京都大学名誉教授)
ギリシャ・ローマの古代世界を西欧で再生したのが「ルネッサンス」であるとすれば,日本ではじめてその全体像の構築を試み,「再生」を図ったのが本書である.平易な文体で読者を新たな発見にいざなう力量もまた特筆に値する.ややもすると美術を偏重するきらいのあった従来のルネッサンス像に代わり,その地域と時代による多様性,経済的政治的背景などを詳細に解き明かした功績は,とりわけ高く評価される.
樺山紘一(印刷博物館館長/東京大学名誉教授)
13世紀から16世紀まで,これだけの目配りとバランスを整えたルネッサンス時代史はそうざらにはない.イタリア半島ばかりか,フランス・スペイン・イングランド・ドイツにも大幅に場を与えた.しかも,たんに歴史事象を振りかえるだけでなく,つねに21世紀現在の文明観を前提にして,ルネッサンスの位置と意味を考える.私たちも,襟を正して,この大著に向きあうことにしたい.
ジョルジョ・アミトラーノ(イタリア文化会館東京 館長)
西本先生の新著は,「ルネッサンスは変化と転換の時代である」との考え方に立って,ルネッ…