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ローカルボクサーと貧困世界〔増補新装版〕

マニラのボクシングジムにみる身体文化

著:石岡 丈昇

電子版

内容紹介

日本の興行にも必要な「敗者」を供出する、フィリピンの貧しいボクシングジム。ここで著者が寝食を共にした裸一貫の拳士たちの、真の闘いに注目せよ。もう、財力にお膳立てされた「スポーツ」が物足りなくてしょうがない。――(藤原辰史 歴史学者)

ここで問われているのは、「人々はどのようにして生きているか」という普遍的な問いだ。まるで、息を止めて冷たく暗い夜の海に深く潜るように、石岡丈昇は現場に入っていく。――(岸政彦 社会学者)

寝食を共にする調査によって描き出された、ボクサー達の生き様。国際的なマーケットに組み込まれ、闘い続ける彼らはどんな人生を生きているのか。岸政彦氏による解説、ボクサーたちのその後を描く「後章」を加えた、待望の増補新装版。

目次

序 章 ローカルボクサー世界から
1 ローカルボクサーの社会学
2 貧困世界とのつながり
3 住み込み調査と身体文化への着目

第1章 ローカルボクサーの身体文化への方法的接近
1 ローカルボクサーへの接近
2 第三世界スポーツ論の問題構制
3 「スポーツ社会学のための計画表」と二重のフレーミング論
4 マニラ首都圏のローカルボクサーへ

第2章 ボクシングジムの空間構成
1 Eジムのボクサーと非ボクサー
2 Eジムのコンテクスト
3 ボクサーの属性
4 〈全体的空間〉としてのジム

第3章 ボクサーになる――集団競技としてのボクシング
1 ジムの日常の深みへ
2 ボクサーになる
3 ジムワークにみる実践理性
4 サクリフィショという倫理
5 女性の排除形式
6 集団競技としてのボクシング

第4章 ボクシングマーケットの構造――敗者の生産の仕組み
1 ボクシング試合と敗者の生産
2 試合をめぐるボクサーの性向
3 ボクシングマーケットの政治経済
4 国際試合の交渉過程と「敗者の生産」
5 ボクシングキャリアの分類化
6 社会的選別と身体のトレード

第5章 互酬性の中のボクサー身体――引退ボクサーの日常
1 引退ボクサーの日常へ
2 スクオッターを生きる
3 スクオッター生活の窮状
4 引退ボクサーの暮らし
5 互酬性の中のボクサー身体

終 章 裸一貫のリアリティへ
1 ローカルボクサーの生活実践
2 裸一貫のリアリティを見据えた身体文化研究へ

後 章 その後のボクサーたち
1 ラフィ――単身での子育て、そして料理人へ
2 ステラ――フィットネスジムの運営を軌道に乗せた敏腕経営者
3 ロセリト――フィットネストレーナー、妻子の移住、女子ボクシング
4 ロイ――総合格闘技、中国への移住
5 ジェイソン――日本への移住

注/あとがき/増補新装版あとがき/図表一覧/文献/索引

解 説 時間/身体/人生 (岸 政彦)

著者略歴

著:石岡 丈昇
1977年岡山市生まれ。専門は社会学/身体文化論。
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程単位取得退学。北海道大学大学院教育学研究院准教授を経て、現在、日本大学文理学部社会学科教授。
単著に『タイミングの社会学――ディテールを書くエスノグラフィー』(青土社)がある。共著に、『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』(岸政彦・丸山里美と共著、有斐閣)、『生活史論集』(岸政彦編、ナカニシヤ出版)などがある。

JP-eコード:79071789000000000064
出版社:世界思想社
コンテンツ公開日:2024年01月17日